2005-01-01から1年間の記事一覧

『失踪日記』、吾妻ひでお、イースト・プレス、2005年

失踪したくなるときがある。 歳をとってからは、ますますその頻度が高くなる。 この作品の作者、吾妻ひでおは実際に失踪し、 しかもそれをエンターテイメントに仕立てたつわものだ。 この漫画は朝日新聞をはじめ、あらゆる媒体で絶賛されたが、 その評価は間…

『コーヒー&シガレッツ』、監督ジム・ジャームッシュ

待望のジャームッシュの新作。 一本の長編ではなく、ショートフィルム形式で ニューヨークのアンダーグラウンド文化を代表する人々の寸劇を綴ったもの。ジャームッシュの新作は長いこと観てないと思って調べてみたら、 『デッドマン』(カッコイイ!)が95年…

『伊刀嘉紘初期傑作集 100匹目のサルと笑う胃袋』

偶然こういう作品に出会えると嬉しい。 このDVDは、ぶらりと立ち寄ったレンタル店で出会ったもの。 ショートフィルムや短編集には興味があるので (「好き」といえるほど観てない)、 面白そうなのをみつけるとついつい借りてしまう。 不勉強ながら、まった…

『働きマン』①〜②、安野モヨコ、講談社

只今絶好調、安野モヨコの社会人マンガ。 『監督不行届』を読んでから安野モヨコのファンになったんだけど、 この作品も期待を裏切られなかった。 「仕事は生きていくための手段」という考えでなく、 「仕事のために生きる」という姿勢がこの作品のテーマ。 …

『NANA』①〜⑬、矢沢あい、集英社

世の中には、どうしても共有できない世界観というものがある。 残念ながら、『NANA』の世界観をぼくは受け入れることができない。 趣味・文化の面では、ぼくは自分でも雑食だと思うのだけれど、 この漫画はダメだった。 理由はいくつもあるのだけれど、…

長い空白の理由、方針変更

ずいぶん長い間「はてな」を更新してないように思う。 理由は単純で、生活環境がいきなり忙しくなったから。 とはいっても、相変わらず映画やら音楽やら漫画は読んでるので、 色々と思うところはあったんだけどね。 ただ、ここ一ヶ月ほどは、新しい生活のリ…

『パイレーツ・オブ・カリビアン』

[film]『パイレーツ・オブ・カリビアン』、ジェリー・ブラッカイマー制作ジョニー・デップ好きの連れの強い要望で一緒に観た。 なんでも、キムタクがスマスマでこの映画のジョニデの物真似を よくやっていたらしいのだが、それがかなり面白いらしい。 で、観…

『あなたに似た人』、ロアルド・ダール、ハヤカワ文庫、一九七六年(1961)

ずっと読みたかった本。『チャーリーとチョコレート工場』の映画化に伴い、 ロアルド・ダールに興味を持ったぼくの連れに貸してもらった。多分、古本で買ってて、本棚のどこかにあると思うのだけれど、 ちょっとあまりにカオスで探せないので、 これを機に一…

『殺し屋 1』、三池崇史監督

特に観たい映画ではなかったけど、 ファビュラス・バーカー・ボーイズがエラク衝撃を受けてたので観た。 ……彼らの言葉通り、強烈です。 妊婦は絶対観てはいけない。 暴力・残酷シーンは顔をそむけたくなる。 三池崇史の映画魂が全開だ。 原作は山本英夫の同…

『ゼブラーマン』、三池崇史監督

主演・哀川翔、脚本・工藤官九郎、監督・三池崇史。 実に贅沢なスタッフだけど、それもそのはず、 この映画は哀川翔通算100本目の出演記念作品。 だから、ぼくも大いに期待していたんだけど…… …ちょっと期待はずれかな。 漫画、『ウイングマン』のように、 …

『キューティ・ハニー』、庵野秀明監督

永井豪の懐かしいお色気アニメを、庵野秀明が実写化した作品。 『新世紀 エヴァンゲリオン』、『彼氏彼女の事情』以降、 庵野はアニメでなく実写を撮り続けている。『ラブ&ポップ』、『式日』、 そしてこの『キューティ・ハニー』だ。 『ラブ&ポップ』は観…

「サイゾー」2005年9月号

これはあまり大きな声では言えないけれど、 「サイゾー」はやっぱり面白い。 ゴシップ雑誌の面があるからカミングアウトする勇気がいるけれど。 これでもう少し経済面が充実してれば言うことないね。 押井守と山形浩生の連載があったから買い始めたんだけど…

[film] 『ロスト・イン・トランスレーション』、ソフィア・コッポラ監督

久しぶりに頭に来る映画だ。 これを観て頭に来ない日本人がいるのだろうか? 妻子があり、そこそこ成功もしているが すべてに倦怠を感じている映画俳優(ビル・マーレー)と、 大学の哲学科を卒業してカメラマンと結婚したが、 将来への不安にさいなまれてい…

『悪い女 青い門』、キム・ギドク監督

ヤクザな男に付きまとわれ、 体を売って生活費を稼ぎながら絵の勉強をする女と、 その女を住み込みの売春婦として雇って民宿を経営する一家の物語。 これ、寓意的な意匠に満ちた映画だね。 主人公の女がシーレの絵を大事にして部屋に飾っていたり、 金魚を飼…

『オールド・ボーイ』、2004年

日本のコミック(土屋ガロン&嶺岸信明)を原作に、 『JSA』のパク・チャヌク監督が手がけ、 2004年度カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した 戦慄の韓流サスペンス映画。 以上、アマゾンの解説(的田也寸志)より。 安いアクションあり、ドギツイ暴力あり…

『ベルヴィル・ランデブー』、フランス

ジブリが日本の宣伝に大々的に関わったフランスのアニメ。 宣伝文句に使われている大友克洋の言葉は、 「極めてフランスらしいアニメ」。 ぼくもキャラクターの造形なんかそう思った。 で、異文化体験という意味では確かに面白かったが、 大絶賛するほどの映…

『サイドウェイ』、2005年、アメリカ

一度結婚に失敗したワイン通の繊細で内向的な男と、 結婚を一週間後に控えた俳優で 性的魅力に満ちた外交的な男のロード・ムービー。 主人公を対照的な二人に設定したところが成功の理由だろう。 主人公はワイン通の方。 近代文学の主人公の正統な嫡子たる「…

『A.I.』、スピルバーグ監督 (2)

(昨日の続き) 「ファビュラス・バーカー・ボーイズ」とは、 「ウェイン」町山智浩*1と「ガース」柳下毅一郎のユニット名。 命名の由来は映画オタク的な説明があるが、それは割愛。 いずれこの本について書くこともあるだろうからそのときに。 このコンビに…

『A.I.』、スピルバーグ監督

とても面白かった! といっても、 「デイヴィッド、おかあさんに会えてよかったね! スピルバーグよ、感動をありがとう!」 なんていう意味で面白かったわけじゃない。 この映画がすごくたくさんの悪意に満ちているからなんだ。 まず、始まって5分で「セッ…

『スチームボーイ』、大友克洋、2005年

予告編を観て悪い予感はしてた。 してたから大して期待はしてなかったけど、 やっぱり大友ファンとしてはガッカリだ。 ……どうなんだろう、これ。 前評判では、「19世紀のイギリスを舞台に、 細密なグラフィックでおくる冒険活劇」とかなんとかあったように思…

『マイ・ライフ』、綾戸智絵

[book] 『マイ・ライフ』、綾戸智絵、幻冬舎、2002年 綾戸智絵は、デビューのときから注目していた。 といっても、京都のヴァージン・メガストアで大きく推薦されていて、 そこの試聴機で初めて知ったのだけどね。 その頃、ぼくは楽器をやっていたので、 買…

『ハチミツとクローバー』(8)、羽海野チカ、集英社

これもまた楽しみにしてたハチクロの最新刊。 羽海野チカは話が進むにつれて どんどんストーリーテリングが上手くなっている感じがする (ただ、8巻は「手癖」というか、自分の作り出したパターンに ラクに乗っかる傾向が窺えたのだけど、それは気のせいか…

『STEEL BALL RUN』(5)、荒木飛呂彦、集英社

待ちに待った「ジョジョ」の最新刊。 最近は「週刊ジャンプ」でも見なくなっていたので、 うやむやのまま終わってしまったのかと心配していたが、 月刊誌「ウルトラジャンプ」に場所を移して連載していたみたい。 まずはひと安心。 で、内容だけど、いつもな…

『現代思想としてのギリシア哲学』、古東哲明、講談社選書メチエ、1998年

この本について、以前古代ギリシアが専門である友人に聞いてみたら、 ゴミ。みつけたら捨てろ。 というメールが送られてきた。 しかし、そのすぐ後に、 失礼。ゴミといったらゴミに失礼です。 という追伸が来た。これはちょっと言いすぎだと思うけど、 確か…

『『白鯨』アメリカン・スタディーズ』、巽孝之、みすず書房、2005年

(昨日の続き) 「第二回 恋に落ちたエイハブ船長」は、タイトル通り、『白鯨』におけるエイハブ船長の位置を考察する。 『白鯨』§1の有名な箇所、 確かに、私がこの捕鯨航海に出ることは、 とうの昔に作製されていた神意の大番組の一部に 組み込まれていた…

『『白鯨』アメリカン・スタディーズ』、巽孝之、みすず書房、2005年

高校生以上を対象とした、「テクストをじっくりと読む」ための教科書、 「理想の教室」シリーズの一冊。 ちょうど『白鯨』を読み終わったところであり、 このシリーズに興味もあったので読んでみた。 それに……作者が巽孝之。 過去に山形浩生と一悶着あった研…

『白鯨』(2)

(昨日の続き) では、いよいよ物語の寓意の分析に入ろう。 といっても、八木敏雄の解説をまとめるだけだけれど。 八木は、まずD.H.ロレンスが 『アメリカ古典文学研究』(野崎孝訳、南雲堂、1987)に寄せた 『白鯨』論を参考に挙げる。 (モービィ・ディッ…

『白鯨』、メルヴィル、八木敏雄訳、岩波文庫、1851年

訳者の八木敏雄の言葉を借りれば、壮大な「知的ごった煮」な物語である。 引用につぐ引用に窒息しそうになりながら寓意に満ちた挿話が連続し、 さらに物語自身の寓意も最後まで解き明かされることはない。 物語を貫く、世界のすべてを記述し尽くさんとする病…

『ジャズ レッスン』、綾戸智絵、KTC中央出版、2000年

NHKテレビ番組「課外授業 ようこそ先輩」で、 綾戸智絵は母校の小学校を訪れ、後輩の子供たちとジャズを語り、 ジャズを歌った(「教えた」とは言いたくないのだろう)のだが、 これはその一部始終を収めた本。 英語の歌詞を聞き取る際に、 「英語はまず…

“Atomic Swing”, Count Basie

[music] “Atomic Swing”, Count Basie1957年〜1962年の間にニューヨークのキャピトルスタジオで録音された、 ベイシーの音源のコンピレーション盤。 よくある安易な初心者向けの寄せ集め的企画盤かと思いきや、 これが予想を裏切る佳作。 とにかく、リマスタ…