2007-01-01から1年間の記事一覧

『黄金を抱いて翔べ』、高村薫

高村薫は好きな作家だ。 その社会派的なスタンスも好きだけど、 なによりぼくが惹かれるのはその硬派な文体だ。 普段は礼儀作法や慣習にうるさいけれど、 困った時には黙って手を差し伸べてくれる親戚の伯母さん―― そんな外見通りの文体に惹かれてしまうのだ…

『村上龍対談集 存在の耐えがたきサルサ』、文春文庫

村上龍に関してぼくが評価するのは、 その嗅覚というか時代性に対する感覚だ。 それと人脈。 坂本龍一や浅田彰なんて、 ただ顔を合わせているだけでセンスがよくなりそうだ。 もっとも、お互いに気が合わないと人間関係は続かないから、 村上龍の方でも、彼…

『五分後の世界』、村上龍、幻冬舎文庫、H9年,『ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II』, H10年

『五分後の世界』にはやられた。 正直なところ、村上龍は好きな作家じゃないし、 それは今でも変わらないけど、 『五分後の世界』はおもしろかった。 おそらく色々なところで述べられていると思うが、 その優れたところは戦闘場面と人物観察の描写。 あと、…

『マイルス・アンド・ミー』、クインシー・トループ、河出書房新社

ずっと前にセルゲイが薦めてくれた本。 やはりずっと前に読んでまとめておいたメモをあげておく。 この本はいってみればクインシー・トループの 「マイルスとの思い出」本だけど、 ゴシップ的な内容もあり、音楽的な内容もありと 切り口が多彩で興味深く読ん…

『熊の敷石』、堀江敏幸、講談社文庫、二〇〇四年

不思議な文章を書く人だ。 フランス滞在中にユダヤ人の旧友を訪ねた数日間を 随筆的に記しただけの文章なのに、 どうにも気になる作品になっている。 長く続く文章はあまりぼくの好みではないのだが、 本書の文体のするすると伸びていく感覚は、決していやな…

『犬の人生』、マーク・ストランド、村上春樹訳、中公文庫、二〇〇一年

ずっと昔に読んだ作品のメモ・感想がPC内に溜まっている。 今となっては当時の感覚を鮮明に思い出すことは出来ないので、 それぞれメモ書きを適当にあげておく。 気になるところをメモするだけでなく、 なぜその箇所をメモしようと思ったのかも メモしておか…

『押井守の映像日記 TVをつけたらやっていた』、押井守、徳間書店、二〇〇四年

「資料やビデオに頼らず(いい加減な)記憶に基づいて映画を語った」本。 カバーには、 押井守が自宅のテレビで(たまたま)鑑賞した映画について 好き勝手に綴った、異色の<無責任>映画エッセイ! とある。 なにしろ本当に適当なスタンスで、 映画を観て…

『風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡』、宮崎駿、rockin’on

装丁がキレイだったのでつられて買ってしまった本。 宮崎駿については、 あらゆる人があらゆるところであらゆることを書いているから、 特にここで書き留めておくこともないのだけど、 メモ書き代わりにいくつか引いておく。 『トトロ』は自分の子供時代に対…

『意味がなければスイングはない』、村上春樹、文芸春秋、2005年

音楽に関する読み物は大体次の3つに分類される。 1.入門書。 2.ディスク・レヴューの羅列に終始するもの。 3.個人的な体験・思い入れを感傷的に綴ったエッセイ。 専門的な研究書や、読むことによって、 その音楽がこれまでと違うように聴こえてくる批…

『佐藤君と柴田君』、佐藤良明・柴田元幸、白水社、1995年

東大教養学部の2大人気教授による、寄せ集め短文エッセイ集。 これも破格の100円で売っていたので購入。 柴田元幸の文章は安心して読めるし、佐藤良明も一応興味はあるので手にとった。 軽い内容で読み物として面白かった。いつも通り面白かったところをい…

『図書館が面白い』、紀田順一郎、ちくま文庫、1981年

(本書裏表紙解説文より) ゲーテ好きがこうじて「東京ゲーテ記念館」を創った粉川忠。 旅先でも古本屋を駆けまわって“つまらん本”を探し出し 「大宅壮一文庫」を創設した大宅壮一、などなど……。 図書館が出来るまでには、さまざまな人間ドラマがある。 綿密…

『文章工房 −表現の基本と実践』、中村明、ちくま新書、1997年

仕事柄、校正などで日本語に関わることが多いので、 ここのところ何冊か連続で「文章読本」の類を読んだ。 当たり前のことかもしれないが、 勉強になったものもあれば、特に感心しなかったものもあった。 これは世の教科書全てにいえることだが、 万人に同じ…

『絶対音感Q&A』、江口彩子、全音楽譜出版社、2000年

最相葉月の『絶対音感』でも大々的に取り上げられていた、 「江口式絶対音感プログラム」の関連本。 作者の江口彩子は名前からわかるようにこのプログラムの提唱者で、 サブタイトルが「ピアノレッスンを変える?」とあるように、 この本は副教材・ガイドブッ…

『ダーリンはアキバ系』、里中ミナ、2006年、東邦出版

好奇心で買った本。 …いや、世間一般からみれば、 ぼく自身十分オタクであることは自覚しているつもりけど、 『電車男』的な正統派「アキバ系」の世界は 『げんしけん』程度しか知らないので手にとってみた。 内容は、オタクの彼(後に旦那)の生態を 一般人…

ユダヤ人と日本人とにせユダヤ人と日本人

『ユダヤ人と日本人』、イザヤ・ベンダサン、角川文庫ソフィア、一九七一年 『にせユダヤ人と日本人』、浅見定雄、朝日文庫、一九八三年 「日本人は平和と水はタダだと思っている」という 有名な言葉の出典として有名な本。 中曽根首相が国会で引いて有名に…

『行方知レズ 渋さ知らズ1999-2000』

いまや世界的な大所帯バンド、 渋さ知らズの1999年から2000年にかけてのドキュメンタリー・フィルム。 リーダー兼ダンドリストの不破大輔に密着同行する形で撮られている。 このフィルムは既に京都のクラブ、 メトロで「メトロ大学」なるイベントで観たのだ…

「英語を学ぶ理由とは」(2)

前回の続き。 元駿台予備校英語科主任講師、伊藤和夫によれば、 外国語学習の最大の目的とは、 「日本語の理解と運用力を高めること」であるが、 「言語活動は無自覚的なものであるだけに、 それを深めようとすれば言語活動自体を意識させなければならない。…

「英語を学ぶ理由とは」(1)

さて、このブログを中断して、早いものでもう1年。 実はこの間、引越したり、所帯を持ったり、職を変えたりと 環境がめまぐるしく変化する日々を送っていた。 だから、PCに向かってゆっくりと考えをまとめる時間がとれなかった。 でも、こんなに長くなる…