2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

『キウィおこぼれ留学記』、小林聡美、幻冬舎、二〇〇二年

部屋の整理もなんとかめどがつき、日常生活も一段楽したので、 今の内に人から借りている本や、早く読んでしまおうと思っている本を 読んでしまうことにする。 で、この本。「マダム小林」のいつもながらのエッセイである。 小林聡美は女優としては好きなの…

『精神道入門』、小栗左多里、幻冬舎、2004年

『ダーリンは外国人』の作者による、瞑想、写経、座禅、断食などの いわゆる「スピリチュエル・ライフ」の体験ルポ。 帯の宣伝文句は、「ウィークエンドは解脱しよう」。 ……なんというか、非常に幻冬舎らしいコピーである。 これを考えた編集者は自分で恥ず…

『25時』、アメリカ、2002年、スパイク・リー監督、エドワード・ノートン

大胆な仮説を立てよう。 これは、アメリカについての映画である。 筋は、表向き――密告によって7年の実刑判決を受け、その服役のために 刑務所に入所する前の麻薬の売人モンティ(エドワード・ノートン)の 1日(今から「25時間後」であり、これがタイト…

BASS MAGAZINE、リットーミュージック、2001年3月号

2001年はマイルス没後10周年。これを記念しての 「マイルス・バンドを支えたベーシスト達」特集につられて古本で購入。 具体的には、Paul Chambers, Ron Carter, Dave Holland, Marcus Miller, Percy Heath, Michael Hendersonを中心に、 現在活躍するベーシ…

『20世紀少年』(18)、浦沢直樹、小学館

とうとう『MONSTER』の巻数に追いついた。 しかし、その物語の求心力は衰えることを知らない。 二転、三転し、そして話が進むにつれて ますます面白くなっているこのマンガについては、 浦沢直樹が途中で投げ出さないことを祈るだけだ。 このマンガ、尻切れ…

『モーターサイクル・ダイアリーズ』、イギリス=アメリカ合作、2004年

“This is not a story of incredible heroism, or merely the narrative of a cynic; at least I do not mean it to be. It is a glimpse of two lives that ran parallel for a time, with similar hopes and convergent dreams. …… …Is it that our whole …

『インディヴィジュアル・プロジェクション』、阿部和重、新潮社、初出一九九七年

小説は、まず読んで面白いものでなければならない。 当然純文学もその例外ではない。 本作品は充分その基準を満たしている。 前回の芥川賞は明らかに話題作りを狙ったものであり、 そのあからさまな戦略に呆れたものだが、今回は深く納得できるものだった。 …

「書くことについて」(四方田犬彦)

……とはいえ現在のわたしには、もうそれほど自分に持ち時間は 残されていないのではないかという意識がつねにある。 書けるうちに書いておかなくちゃ。 というのも書いておかないかぎり、先に進むことはできないからだ。 書かなければいつまでもそのことが頭…

『THE GIGOLO』, Lee Morgan, 1968, Blue Note 84212

(録音:1965, Lee Morgan(tp), Wayne Shorter(ts), Harold Mabern Jr.(p),Bob Cranshaw(b), Billy Higgins(ds)) 誤解を恐れずに言うならば、ハードバップは形式美の音楽である。 特にそのアドリブ・ソロは、新しいフレーズを産み出したり、 繊細な和音を探…

『NO!! WAR』、野田努・三田格・水越真紀・吉住唯・工藤キキ編、河出書房新社、二〇〇三年

野田努の本が読んでみたくて、偶然インターネットの古本サイトで出会った本。 インタビュー、エッセイ、対談など非常にゴッタ煮の本である。 菊地成孔も対談で参加していることは購入してから知った。 一言でいえば、アメリカのイラクへの進軍について、 日…

『ゼニ論十番勝負』、青木雄二、廣済堂文庫、二〇〇二年

青木雄二は高校の頃から読んでいたマンガ家だ。 ということは、もう十年以上彼の読者であることになる。 熱烈に好きなマンガ家ではなかったが、 『ナニワ金融道』は本の整理をする度になぜか売り飛ばすことのできなかった。 金融のカラクリが分かりやすく書…

『New World Order』, Curtis Mayfield, 1996年

オーギー(以下A):やあやあ、元気してる? 早速だけど聴いてみてくれたかな、 僕が渡したカーティスのアルバム? Takao(以下T):論文の締め切りで忙しかったんだけど、聴きましたよ。 えーと……カーティス・メイフィールドさん。 「メイフィールド」っ…

『夕凪の街 桜の国』、こうの史代、双葉社、2004年

これは、絶望と希望の漫画である。「夕凪の街」は原爆が落とされてから10年後の広島を、 そして「桜の国」はそれから数十年後の1987年と2004年の東京を舞台としているが、 いずれも被爆者の苦しみを描いたものである。 「夕凪の街」は、一言でいえば「絶望」…

『カムイ伝』全15巻、白土三平、小学館文庫

ついに読了。 相原コージから四方田犬彦まで、様々な場面で名前は聞いていたが、 初めから最後まで読み通したのは初めてである。 江戸時代の身分差別をベースに階級闘争を描いた、極めて左翼的な政治的イデオロギーの強い漫画であり、描かれた当時の時代状況…

『shipbuilding』 / 冨田ラボ(2003年)

冨田恵一のプロデュース・プロジェクト、冨田ラボ。 須永辰緒が自身のソロアルバムを作るときの名義が 「sunaga t experience」であるのと同じことだろうか。 冨田ラボは、リミックス盤や雑誌などではよく見かけるのだが、 ソロアルバムを聴くのは初めて。期…

『Plays Fats Waller』, Jimmy Smith, Blunote 4100 

(Quentin Warren(g), Donald Bailey(ds),1962録音) ジミー・スミスが亡くなったことを知った日(2/11)に書いたものを下に記しておく。 今朝、タワレコのメールマガジンでジミー・スミスが亡くなったことを知った。 まだまだ元気なおじいちゃんだと思って…

『hi note』, Gerardo Frisina, 2004, Italy, Schema

今年購入したクラブ・ジャズのアルバムの中で、文句無しに一番のもの。 「ジャケ買い」または「推薦文買い」で最も「当った」アルバムでもある。 Gerardo Frisinaとは変わった名前だが、 イタリアのクラブ・ジャズレーベル、「Schema」を代表するバンドのよ…

『9・11 アメリカに報復する資格はない!』、ノーム・チョムスキー、文芸春秋、二00一年、山崎淳訳(”9.11”, Noam Chomsky, Seven Stories Press, New York, U.S.A. 2001)

アメリカン・ラディカルの一人であり、著名な言語学者でもある著者による 9.11直後に行われたインタビュー集。 時期的に考えて緊急出版だったのであろう、チョムスキーの叙述はなく、 すべてインタビューで構成されている。 それゆえ、重複もあり、全体とし…

『PLUTO』②、浦沢直樹・手塚治虫作、長崎尚志プロデュース/手塚眞監修 手塚プロダクション協力、小学館

浦沢直樹が「2回目の」手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞した。 今日はこのことについて書いておこう。 手塚治虫文化賞は朝日新聞社が主催する賞で、今回は第9回。 今回の社外選考委員は荒俣宏、いしかわじゅん、香山リカ、呉智英、清水勲、関川夏央、マッ…

『ギャラリーフェイク』32巻、細野不二彦、小学館

『ギャラリーフェイク』が完結した。 といっても、これは単行本(コミック)のこと。 スピリッツでは今年の2月頃に既に完結してしまっていたらしい。 細野不二彦は私にとって特別な漫画家だ。 『ママ』という「教養小説」ならぬ「教養漫画」を読んでから目…

『エレファント』、2003年、アメリカ、ガス・ヴァン・サント監督

美しい映画である。 内容は、1999年に起きたコロンバイン高校の銃乱射事件を題材として、 その事件当日をフィクションとして再現したものであり、 極めて社会的なフィルムであるが、同時に、美しいフィルムでもある。 まず、そのことを述べておきたい。 ガス…

『デス・ノート⑥』/原作 大場つぐみ 画 小畑健

物語はまだ完結していないので感想のみ。 期待通りの緊張感を維持していてとても楽しめた。 小学生などの低年齢層が多く読むであろう少年ジャンプで これが連載されていることをとても心強く思う。 子どもが読むものほど、よく考えられていなければならない…

『スラムダンク ―あれから10日後』、井上雄彦、i.t.planning、二〇〇四年

この興奮を、どう表現すればいいのか。 「『スラムダンク』の続きが井上雄彦本人によって描かれる!」。 日本の男の子で、この知らせを聞いて落ち着いていられる人はいないだろう。 そもそものはじまりは、去年(2004年)に、 『スラムダンク』のコミックの…

『on and on』, Jack Johnson, 2003 

忘れもしないが、タワレコでフロアに流れる彼の音楽を初めて聴いたとき、 僕は連れとの会話を無愛想に打ち切って「NOW PLAYING」の画面を見上げていた。 モニターには「JACK JOHNSON」というミュージシャンの名前と、 そのアルバムのジャケットが映し出され…

『ハイ・フィデリティ』

"A while back, Dick, Barry and I agreed.... that what really matters is what you like...not what you are like. Books, records, films—These things matters. Call me shallow. It’s the fucking truth."「僕ら男3人は同意してる。 人の価値は人間性…

『ためぐち韓国語』、四方田犬彦・金光英実、平凡社新書、二00四年。

四方田犬彦の専門は映画史の大学教授だが、その批評の対象は 映画論から政治まで、広く文化一般に及ぶ。 その一方で、自身初めて教職についた韓国文化の紹介者でもあり、 本書はその「韓国系」の本である。 興味深かった点は、男性と女性の二人の両側の視点…