『精神道入門』、小栗左多里、幻冬舎、2004年

ダーリンは外国人』の作者による、瞑想、写経、座禅、断食などの
いわゆる「スピリチュエル・ライフ」の体験ルポ。

帯の宣伝文句は、「ウィークエンドは解脱しよう」。

……なんというか、非常に幻冬舎らしいコピーである。
これを考えた編集者は自分で恥ずかしくないのだろうか。
とても小栗左多里が許したとは思えないのだが。


内容は――左多里さんのルポものなので期待していたのだが、
期待したほどではなかった、というのが正直なところである。
もちろん、読み物としては充分面白いのだが。
これは、左多里さんの筆に責任があるのではなく、
ルポ対象の選択に問題があるのではないだろうか。


どうも私には最近の流行である「マンガつきエッセイ」の流れにのるために、
出版社が強引にスタートさせた企画に思えてならない。


さて、このルポの対象である「精神生活」は、
確かに日本に古来から伝わる精神集中の方法であるが、
一歩間違うと「悪用」されてしまうことがあるのも事実だ
新興宗教の勧誘としてこれらの体験場が利用されることもある、
 ということもこの本で触れられている)。

 作者は、そのあたりを慎重に、客観的に観察してギャグに転化しようとしているのだが、
そのような客観視の姿勢はそもそもの目的である「自己の精神的修養」から
遠く離れたものとなってしまい、その結果、どうも狙いが見えない、
視点のブレたルポとなってしまっている。

 作者自身、

危ないのは、自分のためになることをするのは当たり前でしかないのに
「えらいことしてるっぽい」気持ちになることだなと思う

という意識をもっているだけに、もったいない印象を受けた。
ルポの姿勢が定まっていなかったのではないか。


次回作に期待したい。あと、やっぱりトニーをみたい。

こんな私も修行したい!精神道入門

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