2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『「かわいい」論』、四方田犬彦、ちくま新書、2006年

題名通り、「かわいい」という概念を扱った本。 新書で、四方田氏の本にしては手に取りやすいのが嬉しい。まず、前提として、 「かわいい」の語源としては、「かはゆし」よりもむしろ「うつくし」であること 英語では「かわいい」の訳語として「cute」が使わ…

『ニッポニアニッポン』、阿部和重、新潮文庫

ニッポニアニッポンとはもちろん天然記念物「トキ」の学名。 昨日の『親指Pの修行時代』がペニスをめぐる話だとすれば、 この『ニッポニアニッポン』は「日本」をめぐる話。 自分の名前に「鴇」が使われているいわゆる「引きこもり」の少年が、 トキにシン…

『親指Pの修行時代』、松浦理英子、河出文庫

ペニスに対して、そして男根主義的なものに対して かなり意識的に書かれた小説。 題名のPはずばりペニス。 ある夕暮れ、午睡から目覚めると、右足の親指がペニスになっていた――。 センセーショナルな設定なだけあって、一時期話題になった小説。 その当時、…

森達也を読もう。

最近はメディア批判の書き手としての活躍が目立つが、 森達也の本職は、やっぱりドキュメンタリー作家だ。 氏の著作を並べ、読み比べてみるとそのことがはっきりわかる。 ぼくが森達也を知ったのは、著書では『放送禁止歌』、 映像は『A』、『A2』なのだ…

『ジャズ構造改革 熱血トリオ座談会』、後藤雅洋・中山康樹・村井康司、彩流社

現在進行形のジャズ・ジャズ批評への歯に衣着せぬ座談会。 なあなあの予定調和でなく、実名でガンガン批判しているところが面白い。 ジャズ本といえば、 毎年あきれるほど出版される「ジャズ入門書」にぼくもうんざりしていた。 一体何回入門すれば気がすむ…

『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(上)(下)、R.P.ファインマン、岩波現代文庫、2000年

1965年にシュウィンガー、朝永振一郎らとともに ノーベル物理学賞を受賞した、 リチャード・P・ファインマン(Richard P. Feynman, 1918-88)の自伝。 業績は量子電磁力学のくりこみ理論の完成者、らしい。 量子電磁力学に特に興味のないぼくがこの本を読も…

『下北サンデーズ評』

朝日新聞「キュー」(島崎今日子) いろんな本を貸してくれ、恋愛や友情や思想というものを教えてくれた、 二つ年上の従姉妹がいる。 大学を卒業した彼女は「私、松井須磨子になる」と宣言して、 親に勘当されながら東京の劇団に入った。 私は時折上京して、…

『知識とは』(四方田犬彦、『黄犬本』より)

大学生が教室の講義で得る知識というのは、 大学生のとき得る知識の三分の一でしかないと思う。 あとの三分の一は、 学校の帰りなどに映画館や美術館に行って得る知識であり、 残りの三分の一は友人などの横のつながりで、 人に会ったり、本を読みあったりし…