2008-01-01から1年間の記事一覧

『わたしの外国語学習法』、ロンブ・カトー(米原万里訳)、ちくま学芸文庫、1972(一九八一年)

語学学習者を勇気付ける本。 特に、ある程度年をとってから複数の言語を学ぼうとする人のための本。 語学学習には論理的思考に基づく学習方法が効果的であり、 論理的思考は幼いときよりもむしろ年をとったときの方が上手であることを主題に、 語学学習にお…

『バートルビーと仲間たち』、エンリーケ・ビラ=マタス・木村榮一訳、新潮社、二〇〇八年

仕事上の付き合いのある人から紹介されて読んだ本。 すぐに図書館で予約して読んだ。 紹介文が非常にそそる。 一行も文章を書かなかったソクラテス、 19歳ですべての著書を書き上げ、最後の日まで沈黙し続けたランボー、 めくるめくような4冊の本を書き、そ…

『ロックはどうして時代から逃れられないのか』、渋谷陽一、ロッキング・オン、1996

ぼくらの世代にとって、渋谷陽一は実に有用な存在だ。 というのも、ぼくらの世代はロックの揺籃期〜青年期を同時代体験できず、 そのため、ある程度教養主義的に時代を遡って「勉強」しなければ「ロック史」の全体像を把握できない世代だからだ。*1 『ロック…

『存在の耐えられない軽さ』、ミラン・クンデラ、1984、集英社

10代のころ、「本を読む」というのは「小説を読む」ことだったが、 最近はほとんど小説を読まなくなった。 この読書傾向の変化は意識的なものではなくて、興味の赴くままに本を選んでいるだけ。 いまのぼくは、物語の筋を追うことよりも知識に飢えている。 …

[book] 『ご臨終メディア』、森達也・森巣博、集英社新書、2005年

森達也の名前に引かれて手に取る。 題名どおり、メディア批判の対談。 主に、メディアに携わることの責任の重さ、 そしてこの責任に現在のメディアが無自覚なことに対する批判が述べられている。 森巣博が少々直情的で安易な論旨を述べるのが気になったが、…

『プラネット・テラー in グラインドハウス』、監督ロバート・ロドリゲス

タランティーノの新作! と期待して借りたところ、中身は『プラネット・テラー』。 『デス・プルーフ』を借りたつもりが、棚の隣に並べてあったのか、 間違って手にとってしまったようだ。 どうせグラインドハウスは2本とも観るつもりだったから構わない (…

『エビと日本人』、村井吉敬、岩波新書

最近続編が出た、堅実で硬派な社会学的な研究。 読書のメモ書きを挙げておく。 まずは現状分析や食生活の歴史から。 エビは東南アジアのマングローブ林にかなり人工的に手を加えることで養殖する。 また、卵をたくさん産ませるために眼杯を切除することもす…

『妹ジョディ・フォスターの秘密』、B.フォスター・L.ワーグナー、文春文庫、一九九八年

ジョディ・フォスターは昔から好きな俳優だ。 そのせいで、恥ずかしながらいまだに彼女が表紙を飾った『FLIX』が捨てられない。 一時期ほど熱は高くはないが、ずっと興味はあるので購入した。 題名どおり、実の兄が書く一種の暴露本。 気になったところ…

『大地』(一)〜(四)、パール・バック(中野好夫訳)、新潮文庫

本棚整理のために急いで読んだ一連の本のうちのひとつ。 これは面白かった。 「翻訳物はよくて7割しか面白さを伝えきれない」というのを、 確かむかし阿部公房のエッセイで読んだが、『大地』は訳がよかった。 さすがは中野好夫です。 心に残ったところを引…

『パンズ・ラビリンス』、監督ギレルモ・デル・トロ、メキシコ・スペイン・アメリカ、2006年

人はなぜ小説を読んだり映画を観たりするのだろう。 もっというと、人はなぜ「物語」を必要とするのだろう。 思うに、誰もただ楽しいから映画を観るのではない (いや、もちろんそういうときもあるだろうけど、 ずっと映画を観続けたり小説を読み続けるのに…

『時をかける少女』、監督細田守、製作マッドハウス

文句なしの名作。 何度観てもそう思う。 ゴールドベルク変奏曲の使われ方、伏線の張り方や小物の使い方、 友情と淡い恋心、映像表現など、述べたいことはたくさんあるが、 この作品に関してはあまり説明はしたくない。 大事なことは、映画のフィルムやセル、…

『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』、キングスレイ・ウォード、新潮文庫、1985

ふと立ち寄った古本屋で100円で購入。 なぜわざわざ手に取ったのか、その理由はよくおぼえていないが、 もしかしたらちょっと疲れていたのかもしれない。 また、「ベストセラーはブームが去った後に100円で購入」ということにしているので、 このルールに従…

『動くな、死ね、甦れ!』、監督ヴィターリー・カネフスキー

蓮實 重彦の『映画狂人日記』でベタ褒めされていたのでビデオで借りた。 自信をもって断言するが、今年最大の映画的な事件は、 何といってもヴィターリー・カネフスキーの登場である。 カネフスキーの『動くな、死ね、甦れ!』を見損なった人には、 しばらく…

『マシアス・ギリの失脚』、池澤夏樹、新潮文庫

冒頭が美しかったので引いておく。 朝から話をはじめよう。すべてよき物語は朝の薄明の中から出現するものだから。 午前五時三十分。 空はまだ暗いのに、鳥たちが巣を出て騒ぎ出す。 東の空は夜の漆黒から少しだけ青みを帯びた色に変わって、 地平線のすぐ下…

『カフカ『断食芸人』<わたし>のこと』、三原弟平、みすず書房、二〇〇五

白水社の「理想の教室」シリーズで、 文字通りカフカの短編「断食芸人」の解説、というか謎解き本。 ただ、カフカ初心者(というのもおかしな表現だが)のために書かれた本で、 それほど深く突っ込んだ話をしているわけではないし、 アクロバティックな解釈…

『本読みの「本」知らず』、安原顕、双葉社、2002年

書評本が好きだ。 まず、「本の紹介」という性質上、自分の見識が拡げられる、というのがひとつ。 次に、書評者は限られた文字数で読者の知的好奇心を喚起しなければならないので、 コンパクトに紹介されている本の読みどころがつかめる、というのもひとつ。…

『P.S.元気です、俊平』、柴門ふみ

P.S.元気です俊平 全7巻完結(文庫版)(講談社漫画文庫) [マーケットプレイス コミックセット]作者:柴門 ふみ出版社/メーカー: 講談社メディア: コミック「恋愛の教祖」の最高傑作。 ぼくには、今後これを超えるものを柴門ふみが描けるとは思えない。 「なんか…

『スターバックス成功物語』、ハワード・シュルツ/ドリー・ジョーンズ・ヤング著、小幡照雄/大川修二訳、日経BP、1998年

以前、今とは別の業種の会社で働いていたときに、 将来的にコンサル業務の何かの足しになるかと思って買った本。 本棚の整理のために急いで読む。原題は”Pour Your Heart into It: How Starbucks Build a Company One Cup at a Time”。 邦題は原題に比べると…

「メッセージ・ソング」(2),PIZZICATO FIVE(小西康陽)

以下、先日の返事を。 > にわとりさん 本当に仰るとおり。 以前は、どんな形のものであれ「愛」を重く感じていて 色々なものからなるべく距離をとろうと考えていたのですが、 最近になって少しずつ色々なものに ほのかな愛情を抱き始めています(まわりくど…

「メッセージ・ソング」,PIZZICATO FIVE(小西康陽)

聴くたびに目まいをおぼえる曲。 歌詞は こちら を。 恥ずかしい話だけど、 長い間、ぼくはこの歌詞を昔の恋人とか、 振られた相手に向けたものだと思ってた。 当時のぼくの精神状況では、そうとしか解釈できなかったのも無理はない。 でも、それはちょっと…