2008-10-16から1日間の記事一覧

『マシアス・ギリの失脚』、池澤夏樹、新潮文庫

冒頭が美しかったので引いておく。 朝から話をはじめよう。すべてよき物語は朝の薄明の中から出現するものだから。 午前五時三十分。 空はまだ暗いのに、鳥たちが巣を出て騒ぎ出す。 東の空は夜の漆黒から少しだけ青みを帯びた色に変わって、 地平線のすぐ下…