最近はメディア批判の書き手としての活躍が目立つが、
森達也の本職は、やっぱりドキュメンタリー作家だ。
氏の著作を並べ、読み比べてみるとそのことがはっきりわかる。
ぼくが森達也を知ったのは、著書では『放送禁止歌』、
映像は『A』、『A2』なのだが、
この3つは文句なしに面白かったため、
それから芋づる式に著作を読み漁っている。
森達也の姿勢は一貫している。
この世界に客観的な視点などというものはありえない。
それはドキュメンタリーにもあてはまることで、
というよりもドキュメンタリーは
一般的に「事実を記録している」
かのようにみえるところがいっそう始末が悪い。
ドキュメンタリー・報道は、それを発信する側が
自分の立場をはっきり自覚していなければならない。
さもないと、発信する側も無自覚なまま曖昧な世論を形成してしまい、
少数派の声は黙殺されていく――
というものだ。
もっとも、こうまとめると左翼的な文化人のようだが、
森達也自身はあくまで自分はメディア人の一人として意見を述べているだけだ、
と繰り返し語っている。
森達也については一冊一冊ゆっくり振り返りたいけど、
今は部屋の整理の方が優先事項なため、とりあえず読んだ、
ということのみ書き留めておく。
著作が文庫でたくさん出てる、というのも魅力的なんだよね。
で、面白いのはなんといってもドキュメンタリーもの。
下に挙げた中では
『放送禁止歌』、『職業欄はエスパー』、
『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』、
『悪役レスラーは笑う』はどれも面白い。
『こころをさなき世界のために』や
『世界が完全に思考停止する前に』のようなエッセイは、
氏の思想を知るという意味では面白かったけど、
短いページでは物足りない。
そうそう、ミーハーなことだけど、
『世界が…』は、京都精華大の講演のときにサインをもらった。
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