吉行淳之介、転んでもただでは起きない変態。

耳かき 

 胸を悪くした吉行淳之介さんは、ろっ骨を切り取られるかもしれないけれど、そうなったら、その骨を返してもらって、耳かきを幾本も作り、女性たちにプレゼントしたい。その耳かきで耳をほじくっている女たちの光景を想像して眼に浮かんだのは「しだいに細くなっていく眼、しだいに開かれてゆく唇である」と書いている。

さすがに女性を観察する視点が特異だ。この本は米倉斉加年さんが色彩絵を添えた『女のかたち』という文庫本。米倉斉加年さんの絵がすこぶるそそる。真夏の京都下鴨納涼古本まつりで数年前にみつけた一冊。

 

女のかたち (集英社文庫 10-F)

女のかたち (集英社文庫 10-F)

 

 

米倉斉加年さんといえば、強烈なイメージで覚えているのが次の2冊。

 

ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)

ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)

 
ドグラ・マグラ(下) (角川文庫)

ドグラ・マグラ(下) (角川文庫)

 

 

なんじゃこりゃ。

強烈過ぎて、この2冊を本屋でみたときは笑っちゃいましたよ。

米倉氏は他にも夢野久作の文庫の表紙を描いていて、こんなのがあります。

そうか、一時期、角川文庫がこんなシリーズ出してたんですね。

そういえば書店で見かけた気もします。

 

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押絵の奇蹟 (角川文庫)

押絵の奇蹟 (角川文庫)

 
犬神博士 (角川文庫)

犬神博士 (角川文庫)

 
少女地獄 (1976年) (角川文庫)

少女地獄 (1976年) (角川文庫)

 
人間腸詰 (1978年) (角川文庫)

人間腸詰 (1978年) (角川文庫)

 
骸骨の黒穂 (1980年) (角川文庫)

骸骨の黒穂 (1980年) (角川文庫)

 
空を飛ぶパラソル (1979年) (角川文庫)

空を飛ぶパラソル (1979年) (角川文庫)

 
瓶詰の地獄 (1977年) (角川文庫)

瓶詰の地獄 (1977年) (角川文庫)

 
狂人は笑う (1977年) (角川文庫)

狂人は笑う (1977年) (角川文庫)

 

 

…『瓶詰の地獄』『少女地獄』『人間腸詰』『狂人は笑う』『骸骨の黒穂』…なんというか、よくも悪くもすごいネーミングセンスです。澁澤龍彦的というか、「昭和の厨二病」とでもいえばいいのかな。わたしの大学時代にも、こういうのが好きな女の子いました。耽美的というか、変態的なものに憧れるタイプ。左京区、東山~北山辺りにたくさんいましたよ。

そういえば、25年くらい前、いま名称変更で話題となっているあの大学は「芸短」と呼ばれていました。というのも「京都芸術短期大学」がメインだったから。それから「京都造形芸術大学」と名前が変わったように思ってましたが、どうも91年頃から芸短と造形は並立していたんですね。

 

『瓶詰の地獄』も名作ですよね。*1

 

わたしは創元推理文庫の「日本探偵小説全集」の夢野久作編でこの短編を読み、感心したのを憶えています。

このアンソロジー、『ドグラ・マグラ』『氷の涯』『瓶詰の地獄』を編んでるんですよ! センスよすぎます。これこそ編集者の力量。表紙と合わせて、いい本ですよ。夢野久作についてはまだまだ語りたいこともありますが、それは別の日の楽しみにしておきましょう。 

 

*1:ヒッチコック劇場に「ビン詰めの魔物」という異色の短編があります。わたしの中では「ビン詰」というとこの2つが双璧。

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