浦沢直樹が「2回目の」手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞した。
今日はこのことについて書いておこう。
手塚治虫文化賞は朝日新聞社が主催する賞で、今回は第9回。
今回の社外選考委員は荒俣宏、いしかわじゅん、香山リカ、呉智英、清水勲、関川夏央、マット・ソーン、萩尾望都。
大賞が『PLUTO』、新生賞がこうの史代の『夕凪の街 桜の国』、短編賞が西原理恵子の『上京ものがたり』『毎日かあさん』だ。
岩明均の『ヒストリエ』、二ノ宮知子の『のだめカンタービレ』、井上雄彦の『リアル』などは一次選考通過に終わった。
前回の芥川賞と同じく、納得できる選考のように思う。
ただ、浦沢直樹は既に第三回目に『MONSTER』で受賞しており、二度受賞した前例が無いため、「多くの人に賞を与えるべき」という意見もあったようだ。
浦沢直樹のストーリーテリングの秀逸さについてはいつも書いているし、『PLUTO』はまだ完結していないので作品については述べることはない。
書き留めておきたいのは、「プロデュース」という形でこの作品に参加している長崎尚志についてである。
長崎尚志は、スピリッツの元編集長。
現在はフリーの編集者、マンガ原作者だ。
彼は、若い時代の浦沢の担当につき、その長い創作活動について指針を与えたという。
それは、「将来自分が好きなマンガを書く為に、とりあえず人気を取れるマンガを書け」というものだった。
『YAWARA !』や『HAPPY !』はこれを忠実に実行したものなのだろう(そう考えると、この二つの作品のタイトルが非常に似通っているのにも納得がいく。これは浦沢のサインではないだろうか?)。
見方を変えれば、これは読者を軽んじた、非常にエゴイスティックな姿勢といえるかもしれない。
しかしこの戦略のおかげで、私達が『20世紀少年』や『PLUTO』を読むことができるのも事実だ。
批判の矛先は、このような戦略をとらなければ好きなものを書くことが出来ない現在のマンガ出版界に向けられるべきだろう。
ただ、この賞について疑問点を一つ。
賞の対象となるマンガは、完結したものにするべきではないだろうか。
『PLUTO』がいい作品であるとはいえ、恐らくこれはまだ全体の3分の1も終わっていない。
「昨年発行されたすべてのマンガ単行本の中で最も優れた作品に贈る」という選考基準も曖昧なものに思われる。
選考基準をもう少し明確なものにしないと、単なる話題性重視のもので終わってしまう危険性はなくならないのではないだろうか。
最後に、浦沢直樹は誰かに似ているとずっと思っていたが、今日、それが誰だかわかった。
ハービー・ハンコックに似ているのだ。
肌の色が違うからわかりにくいが、笑った顔なんてソックリである。
あと、『PLUTO』②の豪華版のオマケはいらない。
限りなくムダである。
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