『ためぐち韓国語』、四方田犬彦・金光英実、平凡社新書、二00四年。

四方田犬彦の専門は映画史の大学教授だが、その批評の対象は
映画論から政治まで、広く文化一般に及ぶ。
その一方で、自身初めて教職についた韓国文化の紹介者でもあり、
本書はその「韓国系」の本である。


興味深かった点は、男性と女性の二人の両側の視点から語られている点だ。
しかし、語学の教授という面があるためか、
内容的には、いつもの四方田節とでもいうべき、
論理と感傷が融合した美しい文章はあまりみられない。


英語ならば、最近でこそ朝日のStudent Timesでさえ連載されるような
スラング=タメ口」について、韓国語版がでたという点が本書の意義なのだろう。


トリビア的、異文化を面白がるという意味で、面白いものはたくさんある。
例えば……

大量の外国人労働者の到来は、本来は韓国人しか住んでいなかったソウルに
エスニシティなるものを導きいれてしまった。
かつてチャイナタウンを潰してしまうほどにナショナリズムの強かった韓国に、
今では中国人地区をはじめとして、さまざまにエスニックな地域が
形成されようとしている。(四方田)

SHALL WE ダンス?』は、韓国でも大ヒットしたが、
一番人気があったのは主演の役所広司ではなく、三枚目の竹中直人で、
観客の誰もが彼を主人公だと思っていたらしい。(四方田)

「ぽじ」はずばり「女性器」を意味する語なので、
韓国で生活しているときに自分の犬を「ポチ」と呼んだら
周りの人がびっくりして振り返った話。(金光)


など。


韓国とは関係ない話なら……