仕事柄、校正などで日本語に関わることが多いので、
ここのところ何冊か連続で「文章読本」の類を読んだ。
当たり前のことかもしれないが、
勉強になったものもあれば、特に感心しなかったものもあった。
これは世の教科書全てにいえることだが、
万人に同じように役立つ教科書というものは存在しない。
学習進度、速度、理解度は各人異なっているのが当たり前だから、
どの教科書を使うのかは使う側が主体的に選ばなければならないのだ。
これを踏まえて言うと、この本はあまりぼくの役には立たなかった。
この本は、
「文章を書く現場で具体的に役立つように、技術面を掘り下げた実学の書である」
ことを目的としているみたいだけど、
手本に挙げられる文章が小説ばかりなので、
むしろ現場ではあまり役に立たないんじゃないかな。
人は日常で小説ばかり書いてるわけじゃないし、
世にごまんとある文章の中で、小説なんてその内のごく一部に過ぎないから。
斎藤美奈子に従えば、
本書は文章を「表現の道具」と考えている、
三島由紀夫・丸谷才一ラインの文章読本に分類されるだろう。
(その逆は清水幾太郎・本多勝一らの、文章を「伝達の道具」と考えるライン)
ぼくは文章を「表現の道具」と考えているわけではないので、
いまはこの本は必要ではないのだ。
そもそも、達意の文章が書けなくて「自己表現の文章」なんて書けるのだろうか?
豊かに表現したい人の役に立つだろう本。
著者の他の本は、
『センスある日本語表現のために』、
『比喩表現辞典』、『表現力を高める辞典』など。
本書『文章工房』もこれらの延長にある本なのだろう。
やはり、ぼくが求めたことが書かれていなかったのは、
読む前にどういう本なのかチェックしなかったぼくに責任があったようだ。
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