『犬の人生』、マーク・ストランド、村上春樹訳、中公文庫、二〇〇一年

ずっと昔に読んだ作品のメモ・感想がPC内に溜まっている。
今となっては当時の感覚を鮮明に思い出すことは出来ないので、
それぞれメモ書きを適当にあげておく。
気になるところをメモするだけでなく、
なぜその箇所をメモしようと思ったのかも
メモしておかなければならないとを反省。


まず、マーク・ストランドというこの作家だが、
「戦後のアメリカの詩を語るには、この名前は外せない」らしい。
本書の解説については、訳者の村上春樹の言葉を引いておく。

ひとことで言えば、
この短編集に収められた作品はどれをとっても
「ちょっと変な」ものである。
「ちょっと変な」を超えて、
「なんのこっちゃ」というのもいくつかある。
short storyというよりは
むしろprose narrative(散文的語り)と読んだ方が
雰囲気としては近い気がする。
というのは、ここでは「物語性」よりは「語り口」の方が
より大きな意味を持っているように感じられるからだ。
一見して寓意のようにとられる要素が多く含まれているようだが、
それらの多くは計算された寓意というよりはむしろ、
前にも述べたようにきわめて自発的な「イメージの羅列」に
近いのではあるまいかと僕は考えている。


 …つまり、僕らがその「お話」によって
実際にどれくらいの心的な移動を受けるかという、
一種フィジカルなダイナミズムが、
この人の「短編小説」の要点なのではないかと考えるのだ。
それは――おそらく言うまでもないことかもしれないが―
―詩の作用によく似ている。

この解説の通り、何か不思議な話ばかりでしたよ。

話の筋とはあまり関係ないが、

私は人間というものに強く心惹かれたことが一度もなかった。
彼らは私を怯えさせるか、あるいは私の興味を惹かないか、
どちらかだった。
(「殺人詩人」)

という言葉にドキッとした。
最近はめっきり読むのが少なくなったけど、
こういう言葉に出会えることが
小説や詩を読むことの楽しみの一つだと思う。

犬の人生 (中公文庫)

犬の人生 (中公文庫)