『スチームボーイ』、大友克洋、2005年

予告編を観て悪い予感はしてた。
してたから大して期待はしてなかったけど、
やっぱり大友ファンとしてはガッカリだ。
……どうなんだろう、これ。


前評判では、「19世紀のイギリスを舞台に、
細密なグラフィックでおくる冒険活劇」とかなんとかあったように思うけど、
「絵がキレイ」とか、「CGが凝ってる」という評価は、
もはや『イノセンス』以後通用しないのだ。


蒸気機関」が「現代の科学」や「原子力」を表している、
というわけでもないのだろう。
なにしろ、エンドクレジットではレイ(主人公の男の子)は
飛行機(?)を発明して
得意げに自ら乗り込もうとしているショットがあるのだから。


映画の『AKIRA』を観たときにも思ったけど、
大友克洋は映画のストーリーテリングの才能ないよ。
いいたいこととか、話の筋として必要なものはたくさんあるのだろうけど、
全部詰め込めばいいってもんじゃない。
話のアクセントというか、起伏の付け方こそ、
監督・演出が最も心を砕かなければならないことじゃないのかな。
今回も煮え切らない完成度。


なまじ決定論なんてものを描いたために、
もう漫画が描けなくなってしまったのはわかるけど、
大友克洋はやっぱり漫画を描くべきだ。
初期の短編集から『AKIRA』まで、漫画は全部評価できると思う。
でも、映画は……。
メトロポリス』は面白かったけど、あれはりんたろうが監督だったし、
『MEMORIES』くらいかな、もう一度観たいと思えるのは。


もしかしたら、こんなに大友克洋がアニメにこだわるのは、
手塚治虫がアニメに失敗したからかもしれない。
漫画では圧倒的な手塚治虫も、
ディズニーに憧れて着手したアニメでは思ったほどの結果が出せなかった。
もっとはっきり言えば経営的にも芸術的にも失敗した。
手塚のアニメスタジオは倒産したのだ。
大友克洋は、手塚が果たせなかった夢を果たそうとしているのかもしれない。
でも……それは宮崎駿がもうやってるからいいよ。
宮崎駿だって、漫画だったら全然大友の相手にならないんだから、
大友は漫画を描けばいいのに。
量では手塚にかなわないかもしれないけど、タッチは全然違うし、
手塚とは違う世界を追求できると思うのだけどな。

最後に、レイの声の鈴木杏はいまひとつ。
「頑張ってます」感はあるけど、まだまだ経験不足では。
それよりも、イヤな女の子を演じようとしていた小西真奈美の方がよかった。


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