2006-01-01から1年間の記事一覧

『事件の地平線』、とり・みき、筑摩書房

[漫画] 『事件の地平線』、とり・みき、筑摩書房「牛の首」のことがまだ気になっている。 「件の話」といったほうが世間的には話しが早いのかもしれない。 これについては以前このブログでも書いたが、結局真相ははっきりしない。 とり・みきの『事件の地平…

『死に花』、監督犬童一心

[film] 『死に花』、監督犬童一心犬童一心が、山崎努、宇津井健、谷啓、青島幸雄らを主人公に、 老人ホームのおじいちゃんたちが銀行強盗する話。 ただし、この映画には犬童一心の持ち味である 異なる世界に住む人間と人間の関係への繊細な眼差しは感じられ…

『レイクサイドマーダーケース』、監督青山真治

『レイクサイドマーダーケース』がテレビで放映された。 それもフジの「金曜エンタテイメント」で。 これはちょっと信じられないことだ。 なにしろ監督は青山真治でいわゆるミニシアター系の作風だし、 それほどヒットした作品ではないからだ。 このフィルム…

『THE ゴルゴ学』、ビッグコミック特別編集プロジェクト

『ゴルゴ13』には、単行本未収録の話がある。 第237話、第245話、第266話、増刊32話の4話だ。 その事実をこの本で知った。 その他にも、オフィシャルブックと名乗っているだけあって、 『ゴルゴ13』についてあらゆるデータが網羅されている。 しかし、その…

『サイゾー』2006年6月号、INFOBAHN

世の中には相性というものがある。 ぼくにとって、「サイゾー」という雑誌は相性がよすぎる雑誌だ。 もともとこの雑誌を買い始めたのは、 押井守と山形浩生の連載があったからだけど、 今号はすごかった。 というのも、大谷能生の「東京サーチ&デストロイ」…

『王立宇宙軍 オネアミスの翼』、ガイナックス

先日、偶然つけた「BSアニメ夜話」でこのアニメを特集しており、 つい懐かしくなってDVDを借りてきて観た。 いい話だとは思う。 大仰な使命感など抱いていない人間が、 一人の女性に恋することによって少しずつ成長していく過程が、 80〜90年代の空気感…

『エイリアン』〜『エイリアン4』

『エイリアン』が名作だってことに疑いの余地はない。 というのも、このフィルムはSF・ホラーの佳作でありながら、 レイプへの恐怖を描いた作品だからだ。 H.R.ギーガーによるエイリアンのデザインは もちろん男根をイメージしたもので、 エイリアンの卵が…

『LIVE AT CAFÉ PRAGA』Steve Grossman, 1990

カムバック後のグロスマンが好きだ。 今から10年以上前にHMV店内でグロスマンを聴いたとき、 ぼくは反射的に「Now Playing」のアルバムを手にとった。 それが『Bouncing with Mr.A.T.』。 イタリア、ジェノバの「ルイジアナ・ジャズ・クラブ」のライブ盤…

「ハイウェイ」、くるり

[words] 「ハイウェイ」、くるり『ジョゼと虎と魚たち』が頭から離れない。 くるりのこの曲が仕事中も頭の中で鳴っている。 とりあえず、詞を引いておこう。 (歌詞) ……詞だけみるとあまりよくないな。ジョゼと虎と魚たち(Oirginal Sound Track)アーティス…

『約三十の嘘』、監督大谷健太郎

細かいところまで目が行き届いた、抑制された佳作。 ぼくの好きなフィルムは、そんな感じのものが多い。 『約三十の嘘』はまさにぼくの好みのど真ん中。 愛すべき佳作です。 もともとは土田英生の戯曲なので、極めて舞台色の濃い作品となっている。 鉄道の中…

『ジョゼと虎と魚たち』、監督犬童一心

ジョゼと虎と魚たち(通常版) [DVD]出版社/メーカー: アスミック・エース発売日: 2004/08/06メディア: DVD購入: 5人 クリック: 214回この商品を含むブログ (651件) を見る この映画について、言葉を並べる必要があるのだろうか? 「限りなく繊細で、奇跡的な…

『ホテル・ルワンダ』、監督テリー・ジョージ、2004年、南アフリカ・イギリス・イタリア

やっと観ることができた。 想像していた通り、魂に響く映画だった。 1994年、ルワンダ国内で実際に起きた、 フツ族によるツチ族大虐殺事件を題材にした映画。 フツ族のポール・ルセサバギナはベルギー系高級ホテル、 「ミル・コリン・ホテル」の支配人だった…

 『イン・ザ・プール』、『亀は意外と速く泳ぐ』、監督三木聡

ぼくには重要なことは先送りする癖がある。 行動力は無い方ではないと思うし、なにかしらいつも忙しくしているのだが、 しなければならないことに限って、 いつも期限ギリギリになってからあわてて滑り込ませたりしている。 この性癖は、優柔不断からくるも…

『ZOO』、原作乙一

こんな試みはもっとあっていい。 『ZOO』は、 同名の乙一の短編小説集をショート・フィルム集で構成した作品だ。 考えてみれば当たり前の発想で、 むしろこういった形式の作品を これまであまり目にすることがなかったのが不思議なくらいだが、 これはもち…

『愛の井口昇劇場』

最近、ショート・フィルムづいているので、 同じ棚にあったこの作品もレンタル。 特に井口昇に思い入れがあったわけではない。 このDVDに収録されている作品は、 どれもショート・コメディの形式だが、 その実、井口昇の暗い内的な欲望が投影されたものだ…

『運命の力』、フジ子・ヘミング、阪急コミュニケーションズ

言葉は力をもっている。 昔の人はこれを言霊と呼んだが、 フジ子・ヘミングのこの本はこの力に満ちている。フジ子・ヘミングを好きになったのは『ざわざわ下北沢』を観てから。 それまでは、『シャイン』のような感動系のピアニストかな、と思って それほど…

『山下敦弘短編集』、『どんてん生活』、『ばかのハコ船』、監督山下敦弘

山下敦弘は、以前から名前は耳にしていたが、 実際にフィルムを観る機会がなかった。 ずっと興味はあったので、今回、一気に3作品を観た。 結論から先に述べると、3作品とも無名の俳優を配し、 低予算で制作されながらも映画的文法に則った作品で、 興味深…

『ON THE ROCK』、監督山下澄人

惜しいなあ、このフィルム。 あらゆる要素がもう少しずつよくなれば、 すごく面白い作品になっただろうに。 「きょん」というバーに訪れる客と店員の話で、 カメラは店の中から動かない。 舞台の要素が強いフィルムで、1話10数分の全六話。 ちょっと無愛想…

『神の子どもたちはみな踊る』、村上春樹

[book] 『神の子どもたちはみな踊る』、村上春樹、新潮社短編小説と長編小説は似て非なるものだ。 ともに「小説」でまとめられてはいるが、語り方はまったく異なる。 長編小説が叙述を重ねて、少しずつ世界を構築していくのに比べ、 短編小説はある限られた…

『音楽(秘)講座』、山下洋輔×茂木大輔・仙波清彦・徳丸吉彦、新潮社

以前なにかの書評で読んだ本で、 読んでみたかいけど買うほどじゃないかな、 と思っていた本。 内容は、山下洋輔と、クラシック音楽家(オーボエ・指揮)・ パーカッショニスト(邦楽囃子方)・音楽学研究者という それぞれ異なる3分野の人間との対談を収め…

『またたび浴びたタマ』、村上春樹、文藝春秋

『海辺のカフカ』を読んでハルキづいたので、 近所のブックオフのセールで何冊かハルキ本を購入。 言葉遊びの本で、50音全ての文字で始まる回文が収められている。 特に何も述べる必要もない本だと思うけど、 楽しい本であることは確か。 いくつか面白かった…

『国府宮はだか祭り』、サイゾー (2006年3月)

面白い記事があったので引いておく。 旧暦1月31日(今年は2がつ10日)に、 愛知県稲沢市の国府宮(こうのみや)神社で行われる 「国府宮はだか祭り」は「日本三大奇祭」のひとつと呼ばれている。 この祭りでは、祭りの最中に突然素っ裸で全身の毛をツルツ…

「壊れたドラムでさえ…」(カサンドラ・ウィルソン)

Even a broken drum can save the moon (壊れたドラムでさえ月を救うことができる) カサンドラ・ウィルソンの2003年のアルバム、 『glamoured』に収録された「broken drum」の一節。 解説によれば、 自分の力が限られていようとも、その力を信じ、 どんな…

『海辺のカフカ』、『村上春樹編集長 少年カフカ』、村上春樹(2)

(続き) 心の奥底にうまく言語化できない「モヤモヤとしたもの」があるとき、 それをどう「昇華」するか、というのは人間にとって重要な問題だ。 ここでいう「モヤモヤとしたもの」とは、これ以上表現できないもので、 しかし意識の奥底に確かにそこにある…

『海辺のカフカ』、『村上春樹編集長 少年カフカ』、村上春樹(1)

なんだかんだいって、村上春樹は好きな作家だ。 文体重視の初期三部作もいいが、 『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を読んで、 ぼくは唸ってしまった。 そして圧倒的な『ねじまき鳥クロニクル』! あまりにも鮮やかな、メタファーによる物語…

『神曲』、ダンテ、挿画ギュスターヴ・ドレ

いわずと知れた古典。 あらすじや内容は当然知っていたけど、 実はちゃんと読んだことなかったので『ダンテ・クラブ』を読む前に読んだ。 といっても、これも抄訳、意訳なのだが、 この版を選んだのは、 とにかく全体を通読したかったのと、挿画のドレに惹か…

『ダンテ・クラブ』、マシュー・パール、新潮社、2003

われらの人生の旅路半ばにして、われ正しき道を見失い、 気づけば暗き森の中にありき この言葉は、 「一切の希望を捨てよ、我門を過ぎるものよ!」*1と並んで有名な、 ダンテの『新曲』の冒頭だが、 日本人にはこの一節は特別な意味を持つ。 というのも、冒…

『ヘルタースケルター』、岡崎京子、祥伝社

『リバーズ・エッジ』を読んだ、と言ったら、 『ヘルタースケルター』も面白いよ、と友人に薦められたので読んでみた。 友人の言う通り、勢いがあって一気に読めた。 主人公は若さと美しさを保つために違法の美容手術を受けるモデルで、 美しさへの女の業が…

『サムライチャンプルー』、監督渡辺信一郎

この清々しさは、いったいどこからくるのだろう。 これがサムライチャンプルー、全26話を観終わった素直な感想。 完結したのは随分前だが、 そのとき書いておくのを忘れていたのでここに記しておく。 ナベシンこと渡辺信一郎のつくる作品を貫く思想は、 「人…

『恋の門』、監督松尾スズキ、原作羽生生純

う〜ん、いまひとつノレないな…。 観る前からやな予感はしてたんだけど、見事に的中。 その原因は内容とその語り方のミスマッチにある。 原作の漫画の面白さは、 誰もが一度は抱く、 「若気の至り」的な「自分の好きなものへの熱中」が、 いまどき珍しい暑苦…