『死に花』、監督犬童一心

[film] 『死に花』、監督犬童一心

犬童一心が、山崎努宇津井健谷啓、青島幸雄らを主人公に、
老人ホームのおじいちゃんたちが銀行強盗する話。
ただし、この映画には犬童一心の持ち味である
異なる世界に住む人間と人間の関係への繊細な眼差しは感じられないし、
映像的な美しさもない。
4人の達者な俳優たちの演技を前面に押し出した
エンターテイメントになっている。
それはそれで面白い試みだとは思うけど、
この試みは犬童一心とは相性が悪かったのではないか。
娯楽作品を撮ろうと思って娯楽作品を撮って失敗してしまった感じだ。
そうではなくて、繊細なフィルムを撮ろうと思って滲み出るおかしみ。
犬童一心はそちらの方がはるかに面白いし、向いていると思う。


話としては面白そうだし、映画制作的にもきちんと整っているのだけれど、
どうもいまひとつ興奮できない。
まるで晩年の伊丹十三のエンターテイメント作品を
観たような気分になってしまった。
主人公の4人の演技はさすがに面白いんだけどね。


さて、奇しくも昨日の『レイクサイドマーダーケース』は子供、
今日の『死に花』は老人を扱ったフィルムだ。
サスペンスとコメディとそれぞれジャンルは異なるが、
どちらも現代日本が抱えている重大な問題であることは間違いない。
*1
どちらの映画にもいまひとつ感心しなかったのは、
両方とも、それぞれのテーマをフィルムの題材として
単に利用しているだけのようにぼくには感じられたからだ。
誤解を恐れずにいえば、題材に比して議論が煮詰まっていない。
それぞれの監督が「どう料理するか」という次元で
つくっているように思われるのである。
でも、それじゃだめなんだ。
それがぼくのこの2本の勝手な感想だ。

死に花 [DVD]

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*1:子供と老人、といえば、これは大友克洋が好んで取り上げた題材ではないか。