『ヘルタースケルター』、岡崎京子、祥伝社

リバーズ・エッジ』を読んだ、と言ったら、
ヘルタースケルター』も面白いよ、と友人に薦められたので読んでみた。
友人の言う通り、勢いがあって一気に読めた。
主人公は若さと美しさを保つために違法の美容手術を受けるモデルで、
美しさへの女の業が描かれている。
これがなかなか壮絶で面白かったけど、
作品としては『リバーズ・エッジ』の方が繊細でぼくは好きかな。
「若さ」とか「美しさ」の渇望というのは、
あまりぼくには共感できない。
これは男と女の違いなのか。
個人的には、やっぱりワインのように
年とともに熟していくものだと思いたいのだけど…。*1


さて、この漫画の題名「ヘルタースケルター」は
もちろんビートルズの「HELTER SKELTER」から
(『ホワイト・アルバム』収録)。
有名なタイトルで、よく引用されるんだけど、
実は「うるさい曲」くらいの印象しかない。
だから、これを機に聴きなおしてちょっと調べてみた。


以下は『ビートルズ・リリックス101』(シンコーミュージック)より。

ポールがMELODY MAKER誌のザ・フーの記事に触発されて書いた曲。
記事では
ザ・フーは誰よりも騒がしい、
ダーティなロックンロール・ナンバーをつくった」とあり、
そのような曲をつくろうと思ったのだという。


タイトルの「HELTER SKELTER」とは、
イギリスの遊園地にある螺旋形のすべり台の意味もあるが、
シャロン・テイト殺人事件の犯人であるチャールズ・マンソンは、
このタイトルを「まもなく起こる人種闘争と黙示録の名称」だと信じ、
自分の教団で「’ROCKY RACOON’によって扇動されるブラックパンサーが、
"PIGGIES"(白人)たちを皆殺しにする
'HELTER SKELTER'の時が迫っている」
と説いた。


最初にレコーディングされたものは27分に及ぶものだったが、
アルバムに収録されているものは短いリメイク版。
当日のレコーディングは、
「彼らが何をしようと黙認。彼らは(ドラッグで)完全にイカレていた」
という。

なるほど。
この曲がよく引用されるのは、あのうるさい熱狂感といま引いた経緯、
それとその歌詞にあるのだろう。

底まで落ちたら
すべり台の頂上まで戻る
いったん止まって向きを変え
またまた滑る
底まで落ちたら
君にまた会う


………


気をつけろ、ヘルター・スケルター
ヘルター・スケルター
もうぐちゃぐちゃになっちゃえ


気をつけろ、あの娘がやって来る


When I get to the bottom,
I go back to the top of the slide
Where I stop and I turn
And I go for a ride
Till I get to the bottom
And I see you again


………


Look out, helter skelter,
Helter skelter
Helter skelter


Look out, cause here she comes!

この歌詞の「あの娘」が
岡崎京子の漫画での「業深き悪魔的な女」のモデルになってるわけだ。


しかし、シングルカットされたわけでもない、
こんな一曲が諸方面に影響を与えるとは……。
ビートルズが強力な影響力をもっていたことを改めて実感した。

ヘルタースケルター (Feelコミックス)

ヘルタースケルター (Feelコミックス)

ビートルズ・リリックス 101

ビートルズ・リリックス 101

*1:「実際は酢になるのがせいぜいだ」っていうんだろ、わかってるよ、マーセルス。