『音楽(秘)講座』、山下洋輔×茂木大輔・仙波清彦・徳丸吉彦、新潮社

以前なにかの書評で読んだ本で、
読んでみたかいけど買うほどじゃないかな、
と思っていた本。
内容は、山下洋輔と、クラシック音楽家(オーボエ・指揮)・
パーカッショニスト(邦楽囃子方)・音楽学研究者という
それぞれ異なる3分野の人間との対談を収めたもの。
この前、偶然近所に図書館があることを知り、
そこでこの本に出会うことができたので早速借りてみた。
感想は、どれも対談であるため、
着想としては面白そうなものが散見するが、
いまひとつ突っ込みが足らず、少々物足りなかった。
それでも、仙波さんの対談は近世邦楽の深さを
垣間見ることができて興味深かったし、
徳丸吉彦の分析は小泉文夫にも言及していて知的好奇心が刺激された。


以下、面白かったところを引いておく。

山下洋輔の「ブルーノート研究」
ブルーノートを音階として捉えるのは間違いである。
西洋音楽は普通、
「音階がありそこから和音が生まれ旋律ができる」という一元論だが、
ブルーノートはそれらを別々に考える。
いわゆるフラットした3・5・7度の音は、
それらの音を含む決まった音のかたまりとして出現する。
その旋律と、結果的に伴奏となる和音の進行とは、
本来の成り立ちが違うと考える。
たとえば、「ミ♭ → ド」というブルース特有の旋律に対し、
「G7 → C」というコードが存在しうるが、
そのとき、G7の構成音であるレはミ♭と激しく衝突する。
ここに、アフリカの感性がヨーロッパの和音要素と
衝突している痕跡を認めることができる。

日本の人間国宝というのは、
人間を指定するだけであって芸能の固定を目的にはしていない。
だから日本で伝統、伝統というけれど、
竹本義太夫の時代から「伝統は人によって変わるものだ」
という考えが皆の頭の中にある。(徳丸吉彦)

以前から興味があった民族音楽への興味が刺激された。
いまはまだオリエンタリズムに毛が生えた程度の関心しかないが、
少しずつ探求していきたい。

とりあえず、小泉文夫あたりから読んでみようか。
山下洋輔ブルーノートについての論文も読みたい。

音楽マル秘講座

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