2006-01-01から1年間の記事一覧

『月曜日は最悪だとみんなは言うけれど』、村上春樹編・訳、中央公論社

アメリカのいろんな雑誌や新聞に発表された文学がらみの記事や、 気に入った作家のエッセイや、あるいは短編小説のうちで 興味深いものを気の向くままにスクラップし、 そのうちに何かのかたちで翻訳発表できたらいいなと ぼんやり考えているうちに、 それが…

『できるかなV3』、西原理恵子、扶桑社、2003年

サイバラさんの「えげつない」方面の漫画。 題名の「できるかな」は「いろいろな体験をしてみる」程度の意味で、 登山したり、気球に乗ったり、ホステスしたりするんだけど、 一番すごいのは脱税。 いや、「脱税」というのは違法なので語弊があるが、 つまり…

『エミリー・ローズ』

この映画の予告編、怖いよね。 主人公の女の子の体が変な風に曲がってていきなり悲鳴上げたり、 クラスメートが授業中に黒い涙を流したり。 で、この映画はそれがすべて。 誤解を恐れずに言っちゃえば、予告編を観ればそれで充分です。 監督とプロデューサー…

『誤読日記』、斎藤美奈子、朝日新聞社、2005年

いやはや、またまた声を上げて笑っちゃいました。 斎藤美奈子、本当に面白いなあ。 東浩紀の後に読んだから余計にそう感じるのかもしれないけど、 実にバランスがよい。 ベストセラー本を冷静に読んでみるころにより、 その「トンデモ」ぶりが浮かび上がって…

『不過視なものの世界』、東浩紀、朝日新聞社、2000年

東浩紀には、デビューの頃は注目していた。 しかし、時が経つにつれて興味がなくなっていった。 この本も最近になってから、 半ば氏のことを忘れていた時に偶然出会ったものだ。 どうしてぼくは興味を失っていったのだろう? それは、比較対象として妥当かど…

『DOG-FOOD』、監督田辺誠一、1999年

偶然中古店で出会い、破格の値段だったので購入。 田辺誠一は、大塚寧々と結婚したときは勝手に嫉妬していたが、 『HUSH!』を観て以来ずっとファン。 『約三十の嘘』もよかったし、安心して観てられる役者の一人です。 なので、わりと期待して観たんだ…

書評家としての高橋源一郎

高橋源一郎は書評が面白い。 ぼくは氏の本業である小説もけっこう読んだけど、 圧倒的に面白いのは書評の方。*1 高橋源一郎の小説は……はっきりいってぼくにはよくわからない。 もちろん、話の筋や書こうとしていることは ぼくなりに理解しているつもりだけど…

『ピアノ弾き乱入列車』、山下洋輔

[book] 『ピアノ弾き乱入列車』、山下洋輔、徳間書店、1988年山下洋輔の対談集。 山下洋輔には、こういう異種格闘技をやってもらうと面白い。 この本での対談の相手も、 中村誠一や赤塚不二夫、坂田明、日野皓正などの 古いなじみからのミュージシャン仲間か…

大人は楽しい、ELEPHANT LOVE

NO.1 自由 NO.2 パワフル NO.3 金持ち NO.4 セクシー NO.5 携帯 NO.6 メイクラブ 大人は楽しい yeah! 楽しくないなら早く大人に 楽しくないのは子供だから 楽しいときにはニコニコ 悲しいときにはメソメソ こっちのお水は甘いぞ カモン! 君は子供、大人どっ…

『天』(16)〜(18)、福本伸行、竹書房

この漫画は、あなたにとって人生の一冊になるかもしれない漫画だ。 人生に悩める人、毎日を辛いと感じている人はいますぐこれを読むといい。 『天』は、一言でいえば「麻雀漫画」。 連載していた雑誌も近代麻雀で、 主人公の「天」が打つ破天荒な麻雀と、そ…

斎藤美奈子4本勝負。

貪るように一気に4冊読んだ。 これまで後回しにしていたのを後悔する。 一気に読んだ本は、 1.『紅一点論』、ちくま文庫 2.『あほらし屋の鐘が鳴る』、文春文庫 3.『モダンガール論』、文春文庫 4.『冠婚葬祭のひみつ』、岩波新書 の4冊。 どれも…

『きょうのできごと』、監督行定勲

行定勲のぼんやりとした若者の青春・恋愛映画。 おそらく、若者の繊細な人間関係を描こうとしたのだと思うけど、 あまり成功してないと思う。 行定勲は『GO』のように、勢いのある演出が得意なのだと思う。 面白かった点。 個人的に、舞台が京都で、院生が…

エリントンを聴こう。

デューク・エリントンを聴く人、になかなか出会えない。 「ジャズが好き」という愛好家、それも数百枚単位で聴く人でも、 エリントンをよく聴く、という人にはなかなか出会えない。 これは自信をもって言えるが、多分、ジャズファンのレコードの棚には、 エ…

ルール制定

このブログのルールを新しく定めることにする。 [book][film][music][漫画][words][magazine][days]の七つのカテゴリを、 七日一週間に一日一つずつ書く。 順番はとくに定めない。 ただし、好きなとき、好きなようにルールをやぶれる。 七つのカテゴリは現在…

『ヴィレッジ・ヴァンガードで休日を』、菊地敬一、新風舎文庫

初めてヴィレッジ・ヴァンガードを訪れた時、 「ぼくが求めていた本屋はこういう本屋だ!」と感じた… …ヴィレッジ・ヴァンガード信奉者のステレオタイプな一言だけど、 恥ずかしながらぼくもその内の一人。 もっとも、最近は金を使うのが怖くてあまり足を運…

『オニババ化する女性たち 女性の身体性を取り戻す』、三砂ちづる、光文社新書、2004

ベストセラーなので読んだ人も多いと思うが、 これは是非女性に読んで欲しい本だ。 著者は「リプロダクティブ・ヘルス」を中心とする疫学を専門とする研究家。 「リプロダクティブ・ヘルス」とは聞きなれない言葉で、 カバーでは「女性の保健」と柔らかく訳…

『神道入門 日本人にとって神とは何か』、井上順孝、平凡社新書、2006年

ある専門分野への入門書には2種類ある。 「切り口型」と「網羅型」だ。*1 「切り口型」は日常慣れ親しんでいるものの由来や特徴に注目し、 その分析・解説によって専門分野への通路を開くもの。 「網羅型」は文字通りその専門分野の一から十まで細かく説明…

『働くことがイヤな人のための本』、中島義道、新潮文庫、H16年

いや、参りました。 「健全な」解説(文庫の後ろについているやつね)の在り方、をみた。 この本、一冊の本として完璧です。 きっかけは最近の日課である本棚の整理。 中島義道の『孤独について』(文春新書)が出てきたので、 処分しようと思ってパラパラめ…

『動物化する世界の中で ―全共闘以降の日本、ポストモダン以降の批評』、東浩紀・笠井潔、集英社新書、2003年

なんでこんな本買ったのかなあ…。 はっきりいって、タイトルだけでちょっとゲンナリしてくる本なんだけど。 東浩紀のデビューはちょうどぼくが学部生の頃で、 専攻が近いこともあって注目していた。*1 そして、笠井潔は『哲学者の密室』を読んで友人と大笑い…

『セックス障害者たち』、バクシーシ山下、幻冬舎アウトロー文庫

セックスをどう考えればいいのか、いまだによくわからない。 人並みにセックスは好きだし、この年齢にしてまだまだ興味は尽きないけど、 どこか後ろめたいような気持ちを抱いてしまう。 「セックスは愛の結晶だ!」なんて時代錯誤な少女趣味的にも思わないし…

『サマー・デイズ ビーチ・ボーイズに捧ぐ』、『ビーチ・ボ

[book] 『サマー・デイズ ビーチ・ボーイズに捧ぐ』、『ビーチ・ボーイズのすべて』、中山康樹音楽史的にビッグ・ネームであること以外にビーチ・ボーイズに愛着はなかった。 もちろん、『ペット・サウンズ』は名盤だ。 それは山下達郎やフリッパーズ・ギター…

『オバはん編集長でもわかる世界のオキテ』、福田和也、新潮文庫、H14年

あらかじめ断っておくが、特別福田和也が好きなわけではない。 むしろ、ぼくは氏の思想には懐疑的、というか対立的だ。 ただ、その思想を別にすれば氏の書く文章にある種の魅力があるのは事実で、 特にエッセイなどは何か軽いものを読みたいときにはちょうど…

『となり町戦争』、三崎亜記、集英社、2005年

公共事業としての戦争が主題の話。 行政管理下に戦争は静かに、しかし確実に遂行され、 それに主人公の一市民が巻き込まれる様子が描かれる。 第17回小説すばる新人賞受賞作。 本の五木寛之、井上ひさし、高橋源一郎の推薦文にあるように、 この小説は評価も…

Jazz collective の衝撃

Jazz collective というバンドを聴いたことがあるか? もしも聴いたことがないなら、今すぐクラブへ急いだ方がいい。簡単に紹介しておこう。 「collective」とは、「共同体」とか「グループ」くらいの意味だ。 名前通り、ジャズを主体としたサウンドのバンド…

『スピルバーグ』、筈見有弘

[book] 『スピルバーグ』、筈見有弘、講談社現代新書、昭和62年スピルバーグは単なる娯楽映画の監督ではない。 それに気づいたのは実はつい最近のことだ。 もちろん、子供の頃は夢中になった。 カットや演技、詰め込まれた思想など考えもせずに スピルバーグ…

『ヒッチコック』、筈見有弘、講談社現代新書、昭和61年

『北北西に進路を取れ』がよくできたコメディだ、と言ったのは三谷幸喜。 だが、もちろん普通はヒッチコックといえばサスペンスの巨匠であり、 この本もサスペンス作家としてのヒッチコックを紹介している。 一方で、ジジェクの著作に明らかなように、 ヒッ…

『スイングジャーナル青春録』、中山康樹、径書房

中山康樹はぼくがもっとも敬愛する書き手の一人だ。 音楽について書く、ということについて強く氏から影響を受けた。 データ偏重に陥らず、感傷的な信仰告白にも堕さずに、 音楽そのものについて書く、ということ。 しかも読み物として充分鑑賞に耐えるレベ…

『ダ・ヴィンチ・コード』、ダン・ブラウン、角川文庫

非常に凡庸な作品だと思った。 まず、シオン修道会やテンプル騎士団といったテーマは、 本作品がはじめてテーマにしたものではない。 文庫版巻末で荒俣宏が書いているように、 これらは最近のブームですらある。 本作品の背景を説明するなら、 「聖杯探求」…

『探偵事務所5』、『笑の大学』監督星護

期待していた作品がつまらないときが一番辛い。 先日試写会で観た『インサイド・マン』の スパイク・リーにもガッカリさせられたが *1、 この週末はひどかった…。 林海象が中心になったプロジェクトの『探偵事務所5』と 三谷幸喜が脚本の『笑の大学』を観た…

『毎日かあさん』、西原理恵子、毎日新聞社

[漫画] 『毎日かあさん』、西原理恵子、毎日新聞社サイバラさんの母親日誌。 毎日新聞に連載されていた作品だが、 アル中気味の夫と、息子と娘との日常生活がいつも通りの絵で綴られている。 去年、『PLUTO』と『夕凪の街、桜の国』とともに、 自作の『…