『オバはん編集長でもわかる世界のオキテ』、福田和也、新潮文庫、H14年

あらかじめ断っておくが、特別福田和也が好きなわけではない。
むしろ、ぼくは氏の思想には懐疑的、というか対立的だ。
ただ、その思想を別にすれば氏の書く文章にある種の魅力があるのは事実で、
特にエッセイなどは何か軽いものを読みたいときにはちょうどよかったりする。


で、この本。
日本と世界の政治・経済について、
とにかくモノを知らない『新潮45』のオバはん新編集長に
対談形式で解説する体裁をとっているけど、
これは福田和也が得意とする叙述のスタイル。
一応対談形式になっているけど、恐らくこれはフィクションで、
福田和也が自分一人で考えたのではないか。
モノを知らない、ボケ役の「教えて君」と、
彼に教え諭す「師」のコンビは、物事の説明にとても都合がいい。
もちろん、この起源はプラトンの対話篇まで遡ることができるが、
福田和也はこの形式を最大限に利用している。


以前に読んだ本で、本棚を整理するために
処分しようと思ってパラパラ流し読みしてみたところ……これが面白かった。
はじめは何でこの本がまだ本棚に残っているのかわからなかったが、
読んでみると納得。
世界・日本の政治・経済情勢の裏の意図を、
やや右な立場から実に面白い見方で解説してある。
悔しいが、この本はまだ売れない。
少なくとも『国家の品格』よりはるかに面白い。
思想的には反対したいところだが、残念なことに充分に反論できない。
というか、まだ氏の話を面白いと思ってしまう段階だ。
その意味で、これは乗り越えるべき本だ。
将来的にいつかこの本を処分する。


しかし、こういう本を初めて読んだら、
鵜呑みにしてハマッちゃう人はたくさんいるだろうな…。
右の方が話が明快でわかりやすくてウケやすい。
右傾化の原因はこういうところにもあると思うのだ。

オバはん編集長でもわかる世界のオキテ―福田和也緊急講義 (新潮文庫)

オバはん編集長でもわかる世界のオキテ―福田和也緊急講義 (新潮文庫)