斎藤美奈子4本勝負。

貪るように一気に4冊読んだ。
これまで後回しにしていたのを後悔する。


一気に読んだ本は、


1.『紅一点論』、ちくま文庫
2.『あほらし屋の鐘が鳴る』、文春文庫
3.『モダンガール論』、文春文庫
4.『冠婚葬祭のひみつ』、岩波新書


の4冊。
どれも面白かった。
1はサブ・カルチャー、
2は世相・風俗・女性誌
3は日本近代史における「働く女性」、
4は日本近代の冠婚葬祭の変遷について書かれている。


1の『紅一点論』は、斎藤美奈子の名を一躍有名にした本。
ぼくが彼女の名を知ったのもこの本で、紹介されている内容から、
バリバリのフェミニストかと思っていた。
漫画、アニメ、特撮ヒーローものなどの子ども向けの物語の分析により、
日本のサブカルにおける物語の原型の変遷を探る本で、
予想通り面白かった。
物語の原型の分類として、
「男の子の国」、「女の子の国」のほかに、
「伝記の国」というカテゴリをつくったのは興味深かった。
(ちなみに、対象はジャンヌ・ダルクキュリー夫人
 ナイチンゲールヘレン・ケラー
 この4人、確かにそれぞれ異なる人生を歩んでおり、
 その差異は象徴的。
 フル・ネームだったり、「夫人」付だったりと、
 呼び名からしてそれは明らか。)


2は読みながら腹を抱えて笑いました。
この人、口が悪いなあ。
といっても、読んでて不快になる類のものではなく、
知的な嫌味をちくりと一刺しするくらいだけど、芸として見事です。
女性誌を一刀両断にするくだりは面白かった。
コスモポリタン』がそんなに好色で、
『SAY』がそんなに陰気な雑誌だなんて知らなかった。
雑誌は好きだけど、そんなに女性誌は読まないので、勉強にもなった。


3と4は、平易で読みやすい文章で書かれているものの、
内容は実に興味深い。
中島義道の『働くことがイヤな人のための本』の解説で書いていた
社会学的なアプローチにより、
「近代日本で働く女性」、「近代日本における『家』」が論じられる。
女工・女中の劣悪な労働条件や、
皇室の結婚のスタイルが当時の一般の人々のウェディングを先導するなど、
実に興味深い指摘がたくさんある。
感心したのは、この2冊ともこれまでの歴史だけでなく、
現在の状況も分析してあり、
読者のための現実的な指針、とでもいうべきものをきちんと提示している点だ。
「働く女性」も「冠婚葬祭」も、当事者にとっては切実な問題であり、
「答え」を求めて読む人がいるかもしれない。
だが、これはもちろん微妙な問題であり、
論ずるには著者の立場もおのずと明らかになってしまうため、
あたりさわりのない言葉でお茶を濁すパターンが多いように思うが、
ここを逃げずに書いている姿勢には感心しました。
また、この2冊には「もっと知りたい人のための文献案内」がついていて、
これも嬉しい。
データベースの提示は絶対必要なのだ。


ただ、唯一不満があるとすれば、逆説的だけど、その文章の巧さにある。
意図的なものだと思うけど、
情念だとか、著者のドロドロとしたところが読み取れない。
諦念、といったら言い過ぎだろうが、
ある種の距離感のようなものを感じてしまう。
そのおかげで、
世の営みを横目で見ながらチクリと刺すことが可能になるわけだけど、
斎藤美奈子の自我が腐臭を放っているようなものも読んでみたいのである。


『モダンガール論』を読んでると、
斎藤美奈子中島義道のあの本の解説でああ書くのがよくわかる。
社会学的なアプローチがすっぽり抜けている、という指摘はまったくその通り。
そして、それはぼくにもあてはまることだったりする…。

紅一点論―アニメ・特撮・伝記のヒロイン像 (ちくま文庫)

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あほらし屋の鐘が鳴る (文春文庫)

あほらし屋の鐘が鳴る (文春文庫)

モダンガール論 (文春文庫)

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冠婚葬祭のひみつ (岩波新書)

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