エリントンを聴こう。

デューク・エリントンを聴く人、になかなか出会えない。
「ジャズが好き」という愛好家、それも数百枚単位で聴く人でも、
エリントンをよく聴く、という人にはなかなか出会えない。
これは自信をもって言えるが、多分、ジャズファンのレコードの棚には、
エリントン自身の音よりも、
そのカバー、トリビュートアルバムの方が多いのではないか。
デイブ・ブルーベックマッコイ・タイナーセロニアス・モンク
ソリッド・ブラス、渋谷毅……
もちろん、マイルスの”GET UP WITH IT”もそう。


これは本当に残念なことだ。


「エリントンには、ジャズのすべてがある」といったのはマイルスだが、
これは決して言い過ぎではないと思う。
「祝祭の猥雑な衝動」と「高貴なる前衛の美」。
これがぼくがエリントンに抱く感情であり評価である。
……今気づいたけど、
これはぼくがクラブ・ミュージックに抱く思いとおんなじだ。


とりあえず、中山康樹の言葉を引いておこう。

有名だが誰も聴いたことがない、
偉人らしいことはわかっているが誰も聴こうとはしない
正体不明のエリントンはネス湖ネッシーか。
だがマイルスは『ゲット・アップ・ウィズ・イット』に
「フォー・デューク」と記し、
ティーヴィーは「サー・デューク」と歌う。
あまりの偉人扱いに足がすくむ日本のジャズ・ファンに提言する、
エリントンはこの3枚から聴け!

そして中山康樹薦めるのが、
『Three Suite』、『Money Jungle』、『New Orleans Suite』。
…うーん、さすがの選択だけど、ちょっと作為的なものを感じてしまう。
『Money Jungle』はぼくも異論がないけど、あとの二枚は
「オーケストラ」という言葉に引きずられすぎではないか。
『Three Suite』も『New Orleans Suite』も素晴らしいアルバムだが、
ぼくの意見は違う。


エリントンは、
『The Great Paris Concert』、『Money Jungle』、
『The Ellington Suite』(いわゆる『女王組曲』です。)の順で聴け!
 …というのがぼくの意見です。
この3枚は、それぞれ、
「祝祭の猥雑な衝動の扇動家」、
「ピアニスト、またはモダン・ジャズ・コンボ・プレイヤー」、
「高貴なる前衛の美の表現者」としてのエリントンが堪能できる。


思うに、日本であまりエリントンが聴かれないのは、
廉価版で出たCDの選択にある。
エリントンのCDが1800円で出たのは文句なし。
しかし、その中に『ザ・ポピュラー』が入ってたのがよくなかった…。
『極東組曲』も『ビリー・ストレイホーンに捧ぐ』はどちらも素晴らしいけど、
『ザ・ポピュラー』が一緒に並べてあったら、
まず初心者はこれを買うでしょ。
で、これは一気に好きになるほどいいアルバムじゃない。
まあ、エリントンの2枚目を買おうとは思わないだろうな。
レーベル間の問題もあったんだろうけど、
もしも『The Great Paris Concert』が廉価版で出てたら、
この国のジャズ事情もちょっと変わったはず。
ぼくは本気でそう思う。


エリントンについては、これから何度も考える音楽家なので、
とりあえず今日はここまで。
最後に、中山康樹の文を引用しておく。

しかし前述の3枚、エリントンはこれだけでいい。
これ以上は危険区域。
体験的にいえば、エリントンはほどほどにすべし。
ほかのジャズが陳腐に聞こえるときがすぐにやってくる。

さすがだな、中山康樹

Great Paris Concert

Great Paris Concert

Money Jungle

Money Jungle

Ellington Suites

Ellington Suites