『LIVE AT CAFÉ PRAGA』Steve Grossman, 1990

カムバック後のグロスマンが好きだ。
今から10年以上前にHMV店内でグロスマンを聴いたとき、
ぼくは反射的に「Now Playing」のアルバムを手にとった。
それが『Bouncing with Mr.A.T.』。
イタリア、ジェノバの「ルイジアナ・ジャズ・クラブ」のライブ盤だった。
その頃のぼくはいわゆるブレッカー的なゴリゴリのテナーに夢中だったけど、
カムバック後のグロスマンは圧倒的だった。
時代に逆行するようなバップフレーズで、
「My little suede shoes」や「C.T.A.」なんて曲を
ピアノレスでブロウしまくる男気に惚れた、といってもいい。


若かりし頃のグロスマンももちろんすごい。
カムバック後とは正反対のゴリゴリ・テナー。
デイヴ・リーヴマンとバトルを繰り広げる
エルヴィンの『Live at the Lighthouse』なんかも好きだけど、
でもやっぱり後年のバップなグロスマンにはかなわない。
フレーズもいいけど、その音が実に説得力がある音なんだよなあ。
若い頃の自分を否定するのでなく、「乗り越えた」という確信に満ちた肉声。
「円熟」や「枯淡の境地」とは真逆のみずみずしいサウンド
『Bouncing with Mr.A.T.』は、
バリバリと作業をしたいときなんかにいまでもよく聴く一枚だ。


さて、このアルバム。
店でクレジットをみると、
「CAFÉ PRAGA」はイタリア、ボローニャのクラブらしい。
『Bouncing with Mr.A.T.』と同じイタリア録音のライブ盤だし、
「Ray’s Idea」やモンクの「Ruby My Dear」もやってるから、
結構期待してこのアルバム買ったんだけど――
――残念ながらセッションの域を出る演奏じゃない。
これがジャズの面白いところでもあり、安易なところでもあるのだけれど、
ジャズの文法、言葉を知っている人間が集まれば
綿密な打ち合わせ・リハーサルをしなくても
形の整ったそこそこの演奏が出来てしまう。
こうしたジャム・セッションにこそジャズの魅力だ、
という人もいるかもしれないが、
単なるセッションが名盤になるなんてのは本当に稀な出来事。
凡庸な「そこそこの演奏」で終わってしまうのが大半だ。
このライブ盤がまさにそれ。
少々ハシリ気味のグロスマンと、
なんとかしてそれを盛り上げようとしているバックの努力はきこえてくるけど、
感想としては粗いセッションだ。


ブラウニーの「Blues Walk」を演ってるのは嬉しかったけどね。


Live at Cafe Praga

Live at Cafe Praga

Bouncing With Mr. a.T.

Bouncing With Mr. a.T.