う〜ん、いまひとつノレないな…。
観る前からやな予感はしてたんだけど、見事に的中。
その原因は内容とその語り方のミスマッチにある。
原作の漫画の面白さは、
誰もが一度は抱く、
「若気の至り」的な「自分の好きなものへの熱中」が、
いまどき珍しい暑苦しい劇画のタッチで描かれる
アナクロニズムにあるんだけど、
映画では、この物語は極めていまどきの手法の連発によって、
速いテンポで描かれる。
松尾スズキは内容と手法を対比させ、
その衝突の面白さを狙ったのかもしれないが、
かえってテンポの速い演出によって内容は希釈され、
その結果、演出も奇をてらった軽薄なものに感じられて
相乗的に負の効果となっている。
端的にいって、狙いすぎです。
ちなみに、題名の『恋の門』とは、
五木寛之の『青春の門』(もしかしたら『肉体の門』も?)を
踏まえたものだろうし、
主人公が石に漫画を書く、という設定は、
もちろんつげ義春の『無能の人』へのオマージュでもあるのだろう。
(ちなみに土田世紀の『編集王』にも
コミケで石に漫画を描く人物がいたよね。)
また、この漫画の初出はコミックビームの連載。
当時、『弥次喜多道中 in DEEP』にカネコアツシの『Bambi』、
桜玉吉の随筆漫画、吉田戦車の『象の怒り』(「消滅」ではない)など、
コミックビームは本当に濃かった。
いまも『SOIL』を連載してるしね。
このフィルムを観ていたら、
思わずビームの存在感について考えてしまった。
- 出版社/メーカー: アスミック・エース
- 発売日: 2005/04/08
- メディア: DVD
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (208件) を見る