『ローズマリーの赤ちゃん』、監督ロマン・ポランスキー、1968年、アメリカ

戦場のピアニスト』を観て、ロマン・ポラスキーに興味を持ったので、
その勢いでこの映画も観た。


ホラー映画のジャンルに分類されることも多いが、
感想としてはむしろ良質なサスペンスか。


ジョン・カサヴェテスの浅薄な俳優の夫役はハマリ役だね。
ミア・ファローの神経過敏な新妻の演技も評判通りでよい。
(ぼくなら絶対にダイアン・キートンだけど。
 いずれにせよ、ウッディ・アレンは羨ましい。
 まあ、ぼくのような自意識過剰の男達に
 勇気を与えてくれているのも事実なのだが。)


いろいろ時代を感じてしまうフィルムだけど、
ひとつ面白く思ったのはこの作品が公開されたのが1968年だということ。
いわゆる学生運動が世界的に激しかった年だ。
今から考えてみれば、当時の学生達や若者は
政治的な主張そのものというよりも(「だけでなく」とした方が適切か?)、
時代の閉塞感や権威的な親の世代へ反抗したのだとも思うのだが、
ヒロインのミア・ファローが置かれた立場は
この当時の状況の暗喩と受け取れるのではないだろうか?
自分の知らないところで重要なことが決定され、
その結果、自分が生み出すもの、自分の将来まで決定されてしまう。
自分の苦しみは誰にも理解されず、助けを求めても報われず、
むしろ状況を変えられない無力感が募るばかり。


もちろん、製作者達はこういうことを意識してこの作品をつくった、
なんてことをいいたいわけではない。
ただ、時代背景を考えるとそうとも解釈できるところが実に興味深い。
この若者の反抗が顕在するのが『エクソシスト』であり、
その挫折のなれの果てが『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド
だったりするのだろう。
*1


そうそう、DVDの特典映像では
メイキングや回想インタビューが収録されていて、
意図的にラストをぼかしている、と製作者達が述べているが、
これは上手くいってないのではないか。
あと、メイキングのミア・ファローをみる限り、
ひどく感覚的な人間のようにみえた。
あまりぼくの好みじゃないなあ。
ぼくの好みなんてどうでもいいけど。

ローズマリーの赤ちゃん [DVD]

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*1:こんなこと書くと、コンテクストでしか映画が観れない人間だ、批判されそうだが。