『イン・ザ・プール』、『亀は意外と速く泳ぐ』、監督三木聡

ぼくには重要なことは先送りする癖がある。
行動力は無い方ではないと思うし、なにかしらいつも忙しくしているのだが、
しなければならないことに限って、
いつも期限ギリギリになってからあわてて滑り込ませたりしている。
この性癖は、優柔不断からくるものだとか、要領が悪いためだとか、
破滅願望のあらわれだとか、色々説明はつけられると思うが、
もうそういう行動パターンはやめようと思った。


イン・ザ・プール』と『亀は意外と早く泳ぐ』についてもそう。
両方とも、ちょっと前に観て、
声を出して笑い続けるほど面白い映画だったのだが、
なぜか、いざ書こうとすると面倒に思えてしまって、いつも先送り。
それより後に借りてきたものについて書いていた。
しかし、そろそろ書き留めておかないと忘れそうなので書いておく。


えーと、とりあえずはじめに述べておくと、この映画、ツボです。
だから、冷静に語ることはできなくて、
面白かったところをミーハー的に挙げていくことしかできない。
でも、まあ、この両作品に共通した面白い点を挙げると、

① 脚本が面白い。
② 役者が達者。

ということになるかな。
つまり、舞台的な面白さなのだ。
特に②がすごい。
『プール』は、松尾スズキを筆頭に、きたろう、田辺誠一森本レオ
オダギリジョーはマゾ役をやらせると本当にハマルね。
『亀は〜』は、主役の上野樹里が見事。
これまではあまり興味がなかったけど、この作品で見直したな。
エキセントリックすぎない不思議ちゃんな女の子を上手く演じてる。
のだめカンタービレ』の「のだめ」役候補に上がってた、
というのも充分頷ける話だ。
そして、何といっても、両作品に共通して出演している岩松了ふせえり
とにかく素晴らしい。
この二人が出てくると雰囲気変わります。
『亀は〜』での二人の会話シーンは完全に舞台空間。
これに竹中直人もいたりしたら、ぼくは失禁してしまうだろう。
1分間に1回は必ず挿入される小ネタの連続に、
連れと一緒に声を出して笑いつづけました。*1

で、DVD特典のメイキングも観たんだけど、これにも感心した。
『プール』の松尾スズキの演技は、半分アドリブみたいなんだけど、
実は全て脚本通りらしい。
しかも、演技のつけ方が非常に細かい。
これは、全て「間」と「言葉の面白さ」が重要な要素である笑いだからで、
「ここの台詞で二人の力関係の認識が変わるので、
台詞の前よりも優越感を出して…」
なんてことを、一つの小ネタに関して三木監督自身が指導してる。
いいね、すごく好感が持てます。
三木聡監督は放送作家で、『ダウンタウンのごっつええ感じ』、
笑う犬の冒険』、『トリビアの泉』を担当してたらしい。
『プール』と『亀は〜』が、監督第一作、第二作。
ごっつええ感じ』と『笑う犬』は実はちゃんと見たことないんだけど、
トリビア』的な面白さは通じるものがあるかもしれない。
しかし、ということは、高橋克美が各トリビア後に言う一言も
実は脚本で用意されてるのかもしれない。


内容は、2作品とも特に述べることはないけど、
『プール』の方には、
「都会で暮らす現代人は、多かれ少なかれ病んでいる」という、
とってつけたようなテーマがあることはある。
だけど、ほとんど小ネタしかなかったように思う『亀は〜』の方が、
観終わった後不思議な余韻を感じてしまうのは不思議だ。
それは、夏休みに親しくなった田舎の子たちと別れる時の寂しさに似てる。
*2

とにかく、腹を抱えるほど面白かった2作品。
洗練された笑いって、こういうことだと思う。

イン・ザ・プール [DVD]

イン・ザ・プール [DVD]

*1:ぼくのお気に入りは「手羽ナチス」。これ、いつか絶対どこかでやる。

*2:「街に正体を隠していた某国のスパイ達が地下に潜伏するため、 彼らとは別れなくてはならない」という設定にはなんの政治的意図はないんだろうけどね。