こんな試みはもっとあっていい。
『ZOO』は、
同名の乙一の短編小説集をショート・フィルム集で構成した作品だ。
考えてみれば当たり前の発想で、
むしろこういった形式の作品を
これまであまり目にすることがなかったのが不思議なくらいだが、
これはもちろん、同じ時間を撮影するにしても、
短編を何本も撮る方が長編を一本取るよりも何倍も手間になるからだろう。
『ZOO』は、その「手間」に充分見合うだけの作品で、大いに楽しめた。
短編小説というよりは
ショート・ショート的な面白さを満喫できる作品になっている。
猟奇的な不気味さに満ちた「SEVEN ROOMS」、
なぜか一編だけアニメーションで制作されている「陽だまりの詩」
(もちろんこれは「詩」と「死」がダブルミーニングになってるわけだ)など、
多彩で面白かった。
一番感心したのは「SO-far そ・ふぁー」。
仕掛けとしては小説と同じだろうけど、
映像を使って状況が提示されるので、非常に説得力がある。
両親役の鈴木杏樹と杉本哲太の演技もいい。
題名には
「SO」significant other, 1.重要な他者、他人 2.配偶者、恋人
という意味が込められており、これがこの話を上手く言い表している。
*1
ただ、最後の話、「ZOO」は、
読んでないけど小説の方が効果的だったんじゃないかな、と思った。
粘っこい演出も悪くないし、村上淳も好演だけど、
暗い情念がもうひとつうまく表現されていないというか……。
と、思ってたんだけど、
これはやはり映像で撮らなければならない理由がある。
それは、この「人間の死体が腐敗する過程を毎日カメラで撮影する」
というのが、グリーナウェイの『ZOO』のテーマだったから。
つまり、「ZOO」という乙一の短編自体
グリーナウェイの『ZOO』へのオマージュだったわけで、
映像監督としては、これに挑まないわけにはいかない。
結果は……うん、グリーナウェイよりは成功してると思います。
ただ、グリーナウェイの『ZOO』が問題作だからなあ…。
マイケル・ナイマンの音楽に、シンメトリーの多用など、
これみよがしにお高くとまって、自ら「芸術作品」と宣言している映画。
こういう映画の常として、
自己完結的で、観客のことは考えてないものが多いけど、
グリーナウェイの『ZOO』もその例外ではない。
ぼくはこういう映画も嫌いじゃないけど、
ダメな人ははじめの10分でダメだろうな。
そういえば、以前どこかでピーター・バラカンが
この『ZOO』をワースト映画に選んでいたように思う。*2
ただ、「ZOO」がいまひとつだった、というのも、
もちろん満足した上でのこと。
全体として丁寧に作りこまれていて、大いに楽しむことができました。
手間はかかるだろうけど、こういう形式はもっとやってほしい。
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