漫画

『神秘家列伝 其ノ四』、水木しげる、角川文庫、2005年

「神秘家」というとわかりにくいが、 水木しげるが心惹かれた 「オカルト好きのかぶきもの(『花の慶次』より)」の伝記シリーズ。 この巻には、 仙合四郎、天狗小僧寅吉、駿府の安鶴、柳田国男、泉鏡花が 取り上げられている。 あまり期待せずに読んだのだ…

『ブラックジャックによろしく』(12)、佐藤秀峰、講談社、2005年

テレビドラマにもなった本格医療漫画。 一巻から読んでるけど、読み応えがある。 医療業界には詳しくないし、個人的に世話になったこともなかったので 強い興味はないんだけど、しかし絶対にいずれ関わることになる業界だ。 だから、あまり客観的に読めず、…

『ルパン・ザ・サードY 次元大介編』、山上正月、双葉社、2005年

ヴィレッジ・ヴァンガードで平積みされてあったのをみて購入。 正直、次元好きなので、「次元大介編」などとあったら無防備になってしまう。 が、帰って読み始めてみて…………落胆と同時に憤りが。 タイトルの「Y」を見逃していた。 「Y」は作者の山上正月のYで…

『失踪日記』、吾妻ひでお、イースト・プレス、2005年

失踪したくなるときがある。 歳をとってからは、ますますその頻度が高くなる。 この作品の作者、吾妻ひでおは実際に失踪し、 しかもそれをエンターテイメントに仕立てたつわものだ。 この漫画は朝日新聞をはじめ、あらゆる媒体で絶賛されたが、 その評価は間…

『働きマン』①〜②、安野モヨコ、講談社

只今絶好調、安野モヨコの社会人マンガ。 『監督不行届』を読んでから安野モヨコのファンになったんだけど、 この作品も期待を裏切られなかった。 「仕事は生きていくための手段」という考えでなく、 「仕事のために生きる」という姿勢がこの作品のテーマ。 …

『NANA』①〜⑬、矢沢あい、集英社

世の中には、どうしても共有できない世界観というものがある。 残念ながら、『NANA』の世界観をぼくは受け入れることができない。 趣味・文化の面では、ぼくは自分でも雑食だと思うのだけれど、 この漫画はダメだった。 理由はいくつもあるのだけれど、…

『ハチミツとクローバー』(8)、羽海野チカ、集英社

これもまた楽しみにしてたハチクロの最新刊。 羽海野チカは話が進むにつれて どんどんストーリーテリングが上手くなっている感じがする (ただ、8巻は「手癖」というか、自分の作り出したパターンに ラクに乗っかる傾向が窺えたのだけど、それは気のせいか…

『STEEL BALL RUN』(5)、荒木飛呂彦、集英社

待ちに待った「ジョジョ」の最新刊。 最近は「週刊ジャンプ」でも見なくなっていたので、 うやむやのまま終わってしまったのかと心配していたが、 月刊誌「ウルトラジャンプ」に場所を移して連載していたみたい。 まずはひと安心。 で、内容だけど、いつもな…

 『ばるぼら』、手塚治虫、(KADOKAWA 絶品コミック、2005年)

なぜ日本でこれだけ漫画が発達したのか? ――それは日本以外の国に手塚治虫がいなかったからだ。 確かこれは関川夏央の『知識的大衆諸君、これもマンガだ!』*1 に書いてあったことだが、その通りなのだろう。 『ばるぼら』は面白かった。 一話完結で毎回エン…

『母に習えばウマウマごはん』、小栗左多里、ソニー・マガジンズ

左多里さんの新刊。 『ダーリンは外国人』があまりに面白かったので、 以後、左多里さんの新刊はチェックすることにしている。 料理教室を開いていた母親に簡単料理を教わり、実際に作ってみる漫画。 料理は母の小栗一江さんで、レシピ付き。 ちらっとみたレ…

『ZETMAN』(5)、桂正和、集英社 

桂正和の作品には、二つの傾向があると思うんだな。 一つは「ヒーローもの」で、もう一つは「美少女もの」。 「ヒーローもの」ってのは『ウイングマン』や『ヴァンダー』がそうで、 「仮面ライダー」とか「ギャバン」「サンバルカン」などの、 タイトルに「○…

『げんしけん』(6)、木尾士目、講談社、2005年

「講談社漫画賞落選!!!!」という帯のコピーにまず笑った。 今回は講談社漫画賞はダメだったかもしれないけど、 きっといずれ受賞するよ。 だってこの漫画はとても面白いから。 まあ、その面白さがちょっと問題なんだけど。 今日はそれについて書こうと思う。…

『上京ものがたり』、西原理恵子、小学館、2004年

西原の「叙情グループ」の作品。 「叙情グループ」というのはぼくが勝手にそう呼んでいるだけで、 『はれた日は学校をやすんで』や『ぼくんち』などの作品を指す。 その反対は「激情グループ」で、 『まあじゃんほうろうき』や『鳥頭紀行』など。 ぼくは『ぼ…

『金魚屋古書店出納帳』(上)(下)、芳崎せいむ、小学館、2005年

怒りついでにもう一つ。 最近いろいろなところで紹介されているこの漫画を読んだ。 しかし、これまた期待ハズレ。 傾向としては、最近よくある、 「うんちく系エンターテイメント」だが、はっきりいって技術不足。 漫画の知識は恐ろしくありそうだし、 漫画…

『ひかりのまち』、浅野いにお、小学館、2005年

浅野いにおとの出会いは、ヴィレッジ・ヴァンガード。 山積みとなった『素晴らしい世界』(1)が、 過剰な紹介ポップでベタ褒めされており、 ヴィレヴァンに来ると購買欲を刺激されてしまう私は、 ろくに中身を確かめもせずに購入した。結果は大当たり。 し…

『BECK』(23)ハロルド作石

『BECK』の物語としての推進力は、 世界から拒絶されたときの「絶望」と、 そしてそれをバネとして成長するときの「高揚」とが 交互に訪れるところにある。 その配置のされ方は実に巧妙だ。 流れでみれば23巻は「高揚」の訪れのはずだが、 私はむしろ「…

『のだめカンタービレ』①〜⑫、二ノ宮知子、講談社

話題になっており、前から読みたいと思っていた「クラシック」漫画。 評判通り、期待を裏切らない面白さだった。 キャラ・状況紹介である初めの数巻は フツーの学園ものの(ラブ)コメという印象が強い。 そのため、このままダラダラと面白おかしく続いてい…

『20世紀少年』19巻、浦沢直樹、小学館、2005年

『20世紀少年』は我々に強烈な問題提起を行っている。 今日はそれについて書いておきたい。この漫画は、オウム真理教に代表される新興宗教を大きなテーマとして描かれているが、 興味深いのは1969年当時のサブカルチャーに多大な言及がされているところだ。 …

『江口寿史の爆発ディナーショー』、江口寿史、双葉社、1991年

江口寿史作品の中で、不思議とこれだけ読んでなかったのが、 偶然近所のブック・オフで出会ったので購入。 全て4ページの「超短編」で構成されているギャグマンガだが、 各短編は確固とした批評性に支えられており、大いに楽しむ。 期待以上であり、思わぬ…

『ハチミツとクローバー』⑦、羽海野チカ、集英社

いわゆる「王道の」少女マンガである。 最初は甘く見ていた。 絵はフツーの少女マンガ的だし、 話の筋もこっちは女二人の三角関係で、あっちは男二人の三角関係。 で、この女は昔の男を事故で失っていて今もその男のことを忘れられない… …という感じで整理で…

『MONSTER』、浦沢直樹、小学館、1995年〜2002年

思うところがあり、『MONSTER』を読み返した。 「浦沢直樹を同時代体験できる我々は幸せである。」 何度となく繰り返したこの命題を、ここでもう一度記しておこう。 『MONSTER』は大ヒットしたマンガであり、 『YAWARA』に続き、いわゆるマンガファンでない…

『精神道入門』、小栗左多里、幻冬舎、2004年

『ダーリンは外国人』の作者による、瞑想、写経、座禅、断食などの いわゆる「スピリチュエル・ライフ」の体験ルポ。 帯の宣伝文句は、「ウィークエンドは解脱しよう」。 ……なんというか、非常に幻冬舎らしいコピーである。 これを考えた編集者は自分で恥ず…

『20世紀少年』(18)、浦沢直樹、小学館

とうとう『MONSTER』の巻数に追いついた。 しかし、その物語の求心力は衰えることを知らない。 二転、三転し、そして話が進むにつれて ますます面白くなっているこのマンガについては、 浦沢直樹が途中で投げ出さないことを祈るだけだ。 このマンガ、尻切れ…

『夕凪の街 桜の国』、こうの史代、双葉社、2004年

これは、絶望と希望の漫画である。「夕凪の街」は原爆が落とされてから10年後の広島を、 そして「桜の国」はそれから数十年後の1987年と2004年の東京を舞台としているが、 いずれも被爆者の苦しみを描いたものである。 「夕凪の街」は、一言でいえば「絶望」…

『カムイ伝』全15巻、白土三平、小学館文庫

ついに読了。 相原コージから四方田犬彦まで、様々な場面で名前は聞いていたが、 初めから最後まで読み通したのは初めてである。 江戸時代の身分差別をベースに階級闘争を描いた、極めて左翼的な政治的イデオロギーの強い漫画であり、描かれた当時の時代状況…

『PLUTO』②、浦沢直樹・手塚治虫作、長崎尚志プロデュース/手塚眞監修 手塚プロダクション協力、小学館

浦沢直樹が「2回目の」手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞した。 今日はこのことについて書いておこう。 手塚治虫文化賞は朝日新聞社が主催する賞で、今回は第9回。 今回の社外選考委員は荒俣宏、いしかわじゅん、香山リカ、呉智英、清水勲、関川夏央、マッ…

『ギャラリーフェイク』32巻、細野不二彦、小学館

『ギャラリーフェイク』が完結した。 といっても、これは単行本(コミック)のこと。 スピリッツでは今年の2月頃に既に完結してしまっていたらしい。 細野不二彦は私にとって特別な漫画家だ。 『ママ』という「教養小説」ならぬ「教養漫画」を読んでから目…

『デス・ノート⑥』/原作 大場つぐみ 画 小畑健

物語はまだ完結していないので感想のみ。 期待通りの緊張感を維持していてとても楽しめた。 小学生などの低年齢層が多く読むであろう少年ジャンプで これが連載されていることをとても心強く思う。 子どもが読むものほど、よく考えられていなければならない…

『スラムダンク ―あれから10日後』、井上雄彦、i.t.planning、二〇〇四年

この興奮を、どう表現すればいいのか。 「『スラムダンク』の続きが井上雄彦本人によって描かれる!」。 日本の男の子で、この知らせを聞いて落ち着いていられる人はいないだろう。 そもそものはじまりは、去年(2004年)に、 『スラムダンク』のコミックの…

『監督不行届』、安野モヨコ、祥伝社、2005年

『新世紀エヴァンゲリオン』などの、監督・庵野秀明と 『ハッピーマニア』のマンガ家・安野モヨコの結婚生活マンガ。 ヒットした『ダーリンは外国人』の宣伝文句が 「外国人の彼と結婚したらどーなるの?ルポ」だったが、 それを真似るならば「オタクの彼と…