『悪霊』、高寺彰彦、チクマ秀版社、2005年

ビレバンで大々的に薦められていたので、アオリ文句につられて購入。
「知る人ぞ知る」ホラー漫画の名作なんだそうだ。
巻末には『女優霊』、『リング』などの脚本家、
高橋洋が解説を寄せている。


内容的には、まあ、楽しめた。
高橋洋が解説を寄せているからって訳じゃないけど、
映画化しやすい作品だろうな、と思った。
もっとも、これは恐らく作者の高寺彰彦が映画のショットなどを
意識して描いているだろうから、当たり前のことなのだけど。
主軸となる土地の因縁話のほかにも、
登場人物の因縁の話も盛り込まれたら深みが増したんじゃないか。
しつこく述べられるのは閉口だけど、少々淡白すぎる気がした。


そして、ぼくが一番気になったのは画力。
大友門下ってのはどうしてこう、皆絵が似るのだろう?
『ワールドアパートメントホラー』の今敏とそっくりだよね。
もちろん大友克洋とも。
建物のひび割れにも手を抜かないと
言われているくらいの細密な描写はいいけど、
そのこだわりを登場人物の描き分けにまわすとかして欲しい。
登場人物、あんまり区別がつかないよ。


一コマ一コマを見れば、絵は凝っているし、
構図も練られているんだろうけど、
なぜだろう、物語として読んでみると非常に平板な印象を受ける。
物語のクライマックスで
コマ割をダイナミックにして効果的にするために、
前半を静的にしすぎているためだろうか。


あと、この本は、「レジェンド・アーカイブス」というプロジェクトの一環らしい。

本叢書〈レジェンド・アーカイブス〉は、
何時しか埋もれてしまった隠れた秀作、傑作、
またその存在すら〈幻〉の作品等を選りすぐり、
現在の文庫やコンビニ限定等の趨勢の中、作者、読者双方の
希望、理想を具現化し、その作品〈本来の姿〉を叶え、
徹底するものである。
まずスタートは〈コミック〉から。
読者とは無縁の因習や束縛を退け、繰り返し宣言する!
作者、読者双方に幸せな出逢いを!
      ―――企画・スーパーバイズ・ディレクション 高橋聡

ひどい文章だが、言わんとすることはわかる。
こうした試みは是非継続してもらいたいものだ。


悪霊 (Legend archives―Comics)

悪霊 (Legend archives―Comics)