『放送禁止4』

実に面白いフィルム*1だった。
しかし、この面白さを上手く人に伝えられないのがもどかしい。
その理由は2つ。
一つは、あまりにも変な時間に放送されたテレビの特番だったため、
ほとんど誰も観ていないから。
もう一つはこのフィルムの構成上の問題だ。


一つ目の理由から。
この前の12月24日、例年通り「明石家サンタ」を観て、
毎年パワー・ダウンしていくな、
とか、

「八木さん、ファンです」
「どういうところが?」
「……特に…」

というお約束が一つもなかったな、
とか、
でも八木さんはやっぱりキレイだな、
とか思いながらも結局最後まで見た。


で、例年ならここで眠るところだけど、
新聞のテレビ番組欄をみると、
今年はこの後に「放送禁止4」なる番組があるらしい。
この題名につられない男子はいない。
お色気系内容を期待してそのままテレビをつけていた。


しかし、始まった番組はドキュメンタリー。
「放送禁止」の意味は、
「ドキュメンタリー番組として制作したが、「とある事情により」
放送禁止となったもの」
らしい。
期待を裏切られた、
といってそのままテレビを切ってしまってもよかったけど、
ぼくはドキュメンタリーも好きなのでそのまま観ていた。
すると……これが予想以上に面白くて、いつしかかぶりつき状態に。


内容は、去年話題になった「隣人トラブル」。
以前は親しくしていたが、ご主人が亡くなってからおかしくなった隣人。
薬品によって枯死した家庭農園、大音量の能・狂言の騒音、
誹謗・中傷のビラ貼り、挙句の果てには窓ガラスまで割られる。
で、実はこの隣人は新興宗教の信者で、
怪しげな呪文やまじないをして呪いをかけようとしていて……
……と、この編集が実に巧み。
まさによくできたドキュメンタリーを観ているようだ。

うん? 「ドキュメンタリーを観ているよう?」
そう、これ、実は全部フィクションなんだよね。
簡単に言っちゃえば、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』。
あれよりは数段出来はいいけど。
しかし、ぼくは終盤になるまで騙された。

「とある事情」により放送禁止になったのになんで放送できるんだよ、
とか、
被害にあってる奥さんが美人すぎたり、
新興宗教、こんなにはっきり映しちゃって問題ないのか
(というかこんな新興宗教があったら
 真っ先に『サイゾー』あたりが取材してるだろう)、
とか、
話の流れが出来すぎだ!
とか、
今から考えればツッコミどころはたくさんあるんだけど、
あまりにドキュメンタリー番組の文法に則って編集されているんで、
見事に騙された。
いや、本当に巧妙なんだよ、
照明を全部暗くして全体的に不気味なトーンに統一してるところとか。
(ただ、子供の趣味が昆虫飼育で、
 これとカマキリのメタファー
 ―交尾後にメスがオスを喰らうってやつね―を絡めるところは
 ちょっとあざとすぎる。
 ぼくはここでフィクションだとわかりました。
 ちょっと吹き出しちゃったくらい。)

これ、DVDにする予定あるのかな?
このスタッフ、センスあると思う。
次回作が楽しみです。
久しぶりに感心したテレビ番組。

*1:正確にはビデオか?