『ポートレイト・イン・ジャズ』、和田誠・村上春樹、新潮社、1997年

 
和田誠村上春樹による、計26人のジャズマンのイラスト+エッセイ集。
元々は和田誠の個展「JAZZ」、「SING」に展示されたものに
村上春樹がエッセイを付けたものらしい。


選んだミュージシャンがなかなか通好みである。
ロリンズもコルトレーンクリフォード・ブラウンが選ばれず、
ファッツ・ウォ−ラーやジャック・ティーガーデン、
ビックス・パイダーベックが選ばれている……。
和田誠*1がリアルタイムで好きになったミュージシャンなのだろう。


村上春樹の文章は好きなのだが、
なぜか音楽についての文章はあまり共感することが出来ない。
正確にいえば、音楽の批評・描写の文章に共感できない。
その音楽が村上春樹にとってどう感じられたのか、
またはその音楽との個人的な思い出・付き合いについて語られた文章は
とても面白いのだが、
音楽を分析しようとする文章はどうも面白くないのである。


長い間このことが不思議だったのだが、今回この本を読んでみて、
これは、村上春樹自身があまりに音楽と個人的な関係になってしまっている
せいではないか、と思い始めた。
なにしろ、ジャズ喫茶の運営までしていたということだから。
その意味で、ビル・クロウの『さよならバードランド』や
『ジャズ・アネクドーツ』を翻訳したのはまさに適任だといえるだろう。
『ポートレイト・イン・ジャズ』は期待ほど面白くなかったが、
この2冊は面白いだろう、と期待することにする。


ポートレイト・イン・ジャズ

ポートレイト・イン・ジャズ

*1:1936年生まれ