部屋の整理をしていたら、懐かしい本に出会った。
ナット・ヘントフの『ジャズ・カントリー』。
高校の頃に、父に薦められて読んだ本だ。
高校は吹奏楽部に所属していたが、それはジャズをやりたかったが、
それは通っていた高校には「ジャズ研」なるものがなかったからだった。
結果的には多くの友人に恵まれ、音楽の視野を広げるのに役立ったのだが、
クリフォード・ブラウンに憧れて毎日トランペットを練習する田舎の少年は、
実はこんな本を愛読書にしていた。。
ナット・ヘントフは著名なジャズ評論家で、
いわゆる名盤とされるライナーノーツで彼の文章によく出会う。
今この小説を読み返してみると、そのプロットはいささかステレオタイプで、
音楽の描写は評論家的で隔靴掻痒の感があるが、
これは児童文学として、少年文学として書かれた小説であるせいかもしれない。
以前は気にならなかったところなのだが。
しかし、この本の優れているところは、
白人の主人公がジャズの「ソウル」を掴み取るため、
あれこれと苦しむところだ。
これには評論家としてのヘントフ自身の悩みも投影されているのかもしれなが、
普遍的な苦しみが描かれていると思う。
以下、注より引いておく。
・グリニッジ・ヴィレッジ…
…ニューヨークのマンハッタン南部の地域で、植民地時代から切り離された住宅地域をなしていたが、1910年頃から、芸術家達が集まり、時代に順応しない生き方をする人々の中心をなすようになった。
・マウマウ…
…ケニヤのキクユ族に発生した革命団体と伝えられている。だが、この団体はイギリスの弾圧の口実に使われた架空のものの匂いが強い。ヨーロッパ人をアフリカから追放するためにテロルを行使することを辞さないと伝えられていた。
読み返してみても、高校の頃ほどの感動に襲われない。
これは、私が昔よりも幾分音楽について知識が増え、
憧れの対象であったジャズを幾分客観的にみれるようになったからかもしれない。
……10代の頃は、今と比べて恐ろしく何も知らなかった
(そのくせ根拠のない自信だけはあった)が、
情熱だけは無限にあったような気がする…。
今はその正反対だ。
これを肯定的に捉えたいのだが…。
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