『H』「タイガー&ドラゴン特集号」(2005年6月号)

ドラマ「タイガー&ドラゴン」は面白かった。
毎週の放送を楽しみに待つ。
久しぶりにそんな体験をした。


私はドラマに対して「オクテ」だった。
どちらかというと私は映画に興味があり、
アイドルの露出に一喜一憂する級友を冷笑していた暗くてイヤな少年だったのだ。
そんな私を変えたのは『王様のレストラン』と『池袋ウエストゲートパーク』。
この2作品によって、
映画に似てはいるが、実験精神とその制作方法において
違う可能性を秘めている「ドラマ」という分野を知ったのだった。
この衝撃を忘れないために、そしてこの2つの作品に敬意を表するために、
少々大きな出費だったが両者のDVD-BOXは購入した。
そして、『タイガー&ドラゴン』はドラマ3つ目のBOXとなりそうである。


これまでのクドカン作品では、友情や人情話など、面と向かって語るのには
少々気恥ずかしい「重い」テーマは上手く回避されていた。
『木更津キャッツ・アイ』はどうなんだ、『池袋〜』はどうなんだ、
とすぐに反論されそうだが、これらの作品では、
そういった「重い」テーマは語られているように見えるかもしれないが、
あれは筋の進行に必要な道具として利用されていただけではないだろうか。


私が『池袋〜』を評価するのは話の筋などではなく*1
無駄に多い小ネタ、失敗と受け取られかねないカット・映像、
そしてお茶の間を無視したような速度の演出なのである*2


『タイガー〜』は、この号でクドカン自身語っているように、
そういった「重い」テーマを真正面から扱っている。
そして恐ろしいことに、それは成功しているようにみえるのだ。
私は、最終話から一つ前の話(多分)の、

虎二 「『どん兵衛』なんて名前継ぎたくねえよ。
    俺は師匠がつけてくれた『小虎』って名前が気に入ってんだ」
竜二 「……かなわねえや、あんたには。」

というシーン、そして虎二が刑務所に入っている間、
どん兵衛が「小虎」を襲名して高座に上っていることがわかったとき、
不覚にもほろりときてしまった。


『木更津〜』では「表」と「裏」、
『ぼくのまほうつかい』では「毎回の体の入れ替わり」、
マンハッタン・ラブストーリー』ではイニシャルで回をつなげていくなど、
クドカンは作話上必ず自分自身に「縛り」をかけるらしいが、
それは単なる実験の域に収まらず、
クドカンの脚本家としての力を高めているように思われる。

そんな『タイガー〜』を特集した『H』は評価したい。
「ドラゴンソーダ」のステッカーがオマケでついているのも嬉しい。
しかしこれ、知らない人には本当にセンスの悪いデザインにしかみえない……。
『タイガー〜』のファンであることを示威するため、
このステッカーを貼りたいのだが、いかんせん貼る場所を決めかねている。


他には、「LOVE GUITAR」なる特集で、「汚れ役」な土屋アンナが撮られていた。
やはりキレイだ。こういう姿もいい。
土屋アンナには期待していたのだが……
どうしてあんなことに……。 

*1:筋だけ見るのなら特に拾うところはない。だから私は石田衣良原作は読む気にもならない

*2:もちろんこれは堤幸彦マジックだ