乗り換え切符(永井荷風『断腸亭日記』から)

他人の日記を読むのは楽しい。

悪趣味かもしれませんが、その人の秘密を覗き見しているような気分になります。

それが著名人の日記ならなおさら。

しかし、他人の日記を読むことには別の効用がありまして、それは「当時の文化・風俗を感じられること」。今回の永井荷風もそれ。

 

乗り換え切符

  長崎市内を走る市電は2つの線があり、交差する駅で乗り換えるときは、乗り換えキップをくれる。追加料金は取らないのが嬉しい。これは遥か昔の東京でもあったとい

う。ただし、その乗換切符は昭和19年に打ち切られた。

(五月)五日ヨリ電車乗換切符ヲ出サズ。乗カヘルゴトニ二十銭払フコトトナル。 

 (永井荷風断腸亭日乗』下 )

 

摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)

摘録 断腸亭日乗〈上〉 (岩波文庫)

 
摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)

摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)

 

  

『断腸亭日記』はいいですよね。文豪の日記としても、当時の歴史的資料としてもおもしろい。たしか、わたしがこの記録を知ったのは大学受験浪人生の頃、国語の問題として引かれていたときでした。

その後、敬愛する四方田犬彦先生の『星とともに走る』なども読みましたが、現代でいうと、これに匹敵するような日記文学は何でしょう?

 

星とともに走る―日誌1979‐1997

星とともに走る―日誌1979‐1997