を
「を」が唐突に胸に突き刺さったのは与謝野晶子の歌だった。
戦ある 太平洋の 西南を 思いてわれは 寒き夜を泣く
あゝをとうとよ、君を泣く、君死にたまふことなかれ
『与謝野晶子全集・138作品⇒1冊』【源氏物語・現代訳つき】
- 作者: 与謝野晶子,紫式部
- 出版社/メーカー: 与謝野晶子全集・出版委員会
- 発売日: 2015/09/01
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
「を」でなくてはならない例をもういくつか引こう。
六月を 綺麗な風の 吹くことよ 正岡子規
東京を朝まで遊ぶ (ELLE JAPON No42)
和を遊ぶ (「京朋」京都中京区の工房)
21世紀をどう踏み出すか (2001,10読売新聞)
好きな私を生きてみる。 (girlfight 2001.5.8)
特別編集「向田邦子を旅する」(『クロワッサン』2001.5.22)
坂本龍馬を歩く(『歩く旅シリーズ』)
このあたりになってくると、「文章技術」という名前に恥じないような考察になりますね。
文法的には破格、あるいは普通は使わないような使い方でも、そちらのほうが効果的、というような。
与謝野晶子の「○○を泣く」という叙し方は素晴らしい。
「○○に泣く」だと、その対象にかこつけて、ナルシスティックに自分の悲しみを歌うように聞こえもしますが、「○○を泣く」だと、その対象を純粋に嘆いているように聞こえます。