こういう言葉、たくさんありますよね。
下山帽
吉田戦車のコミックに、帽子屋に入って「下山帽をください」という一コマがある。登山帽はあるが下山帽はない。吉田戦車プロパーのツッコミに不意を突かれて快いが、落ち着いて考えると、「登山」は「登って降りる」がセットになっている、ハズだ。だから登山帽は山に登る時も降りる時もかぶる。
だから、「下山帽を下さい」には意表を突かれるが、私が店主なら気難しい顔を作って「上山と下山両方に使えます」と有無を言わさず売りつけてしまう、だろう。
しかし、である。あまたの国語辞典を引くと「登山」の反対語は「下山」とあるではないか! 登山には下山が含まれていない! ならば汗だくになった登山帽を脱ぎ棄てて、新しい下山帽で山を下りたい。それとも……登山部の生徒は下山しないのであろうか!? コワイことである。
高峰秀子さんは
日本の文字や習慣のほとんどは、中国うまれだというけれど、日本が発明した言葉はまったく片手おちで、たとえば「鬼婆」はあっても「鬼爺」はなく、「愚妻」はあっても「愚夫」はなく、「家内」はあっても「家外」という名詞は聞いたことがない。女にとってはたいへん不都合なことで、私は気に入らない。
とおっしゃる。
高峰秀子さんの大ファンである私は、下山帽が売られていないのが気に入らないのである。
吉田戦車、中学校の頃からのファンです。
確かある日、父がいきなり出たばかりの『伝染るんです。』の1巻を買って来たのだと思います。なんかこのマンガ、面白くて売れてるらしいよ、と。読んでみたらこれが面白い。生意気盛りで、人と少し違うことがカッコいいと考えていた当時のわたしは、このよくわからないマンガのファンになりました。
この話、多分この本に収録されてます。
『伝染るんです。』は装丁もおもしろいんです。
わざと重複とか乱丁ページがあったりして。
「よくわからないけど、とにかくおもしろい」という感覚は、後に大学に入ってから、うすた京介に会ってから感じることになります。
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