アホウドリ 語源から言い伝えまで。

今回はうんちくぎっしりです。

 

アホウドリ (albatross)  

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アホウドリの生態を知らせるTV番組で、日本人少年の2人が外国人のアホウドリ専門家に「どうしてアホウドリっていうんですか。ほんとにアホウなの?」と尋ねていたが、これは和名から生じる誤解で、英語名は albatrossだ。albatrossにアホウの意味があるのならよい質問だが、その意味はない。ないのだから質問された専門家も困ったことだろう。

アホウドリ」と誰がどういう理由で命名したのだろうか。無風では自分から羽ばたいて飛べないので人間が近づいても逃げないですぐ捕まってしまうので、日本ではアホウドリ命名されたという説もある。風が吹かないと飛べないという説明もある。ということは赤道付近の無風地帯を越えられない鳥だということだ。

動きが遅く、捕まえやすいため、「アホウドリ」と名付けられたが、改名を求める声もあるそうだ。(京都新聞 2011.2.12⑫)

 

北半球にいるのはアホウドリ、ウドリ(レイサンアホウドリ)、クロアシアホウドリの3種。このうちアホウドリは1994年ではおよそ850羽しかいなく、鳥島に棲息。他2種は北西ハワイ諸島が主な繁殖地。南半球には11種で、最も大型のワタリアホウドリがいる。ミッドウェー環礁の管轄が米海軍から魚類野生生物局 (FWS) へ移管され、旅行者が見に行けるようになった。

1949年に絶滅宣言が出されたが、1951年に鳥島で10羽が再発見された。それ以降日本政府も保護活動に乗り出した結果、1999年1000羽を越すアホウドリが確認された。50年かけてやっと1000羽である。現在では2000羽を超しているという。

 

英和辞典をみるともう一つ語義がある。

 

心配のもと、悩みの種 (『ジーニアス英和』)

 ついて回る重荷、頭痛の種(『ユースプログレッシブ英和』)

  

そしてまた、面白い解説がある。

「航海中この鳥が飛ぶと嵐の前兆とされた」

「長距離を飛べる最大の海鳥;悪天候を予言すると信じられてきた」

「この鳥を殺すと不幸を招くと信じられている」

等々。

こういう説明を読むと、なんとなくアホウドリは不吉な鳥のように思えてしまうが、本当はそうではなく、逆なのだ。つまり misleadingな(誤解を招きやすい)解説ということになる。真意は「幸運をもたらす縁起のいい鳥」。だって、嵐をいち早く感じ取り船乗りに危険を知らせてくれる鳥なのだから。だから殺してはいけないのだ。嵐で死んだ船乗りの魂の化身だという言い伝えもあるくらい。

映画では White Squall 『白い嵐』で船員6人が死んだ実際の海難事故を扱っているが、その船名がAlbatross号。

 

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英語の接頭語 alb- はラテン語起源で whiteの意味。たとえば、album は白紙のページからなる帳面を指し「アルバム、メモ帳、サイン帳」など。albumen は「卵の白身」のこと。

 

alb-といえば、「アルビノ」もそうですね。

 

アホウドリと「帝国」日本の拡大

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