『猪木詩集 「馬鹿になれ」』、アントニオ猪木、角川書店、2000年

ポエム界に驚異の大型新人現れる!!
当今詩人衝撃デビュー!

帯のアオリ文句につられて古書店で購入。

「サンタモニカの朝に」


不安だらけの 人生だから
ちょっと足を止めて 自然に語りかけてみる

「元気ですかーっ!」

自然は何も 言わないけれど
ただ優しく 微笑みかえしてくれた


元気が一番 
今日も
サンタモニカの
一日が始まる

始めの方のこんな詩を読んだときにいやな予感がしたが、
その予感は、

「駄洒落の神様」


……
もしかして
「かがみ」の真ん中
が(我)が取れたなら
心の真ん中に
神(神)が住む?

「ワインの会」
隣の席の
笑い声がはじける
それを肴に
グラスを傾ければ
俺の駄洒落もピッチが進む


とりとめもない
気の合う仲間の
ワインの会

などの詩で的中。


あまり上手ではない言葉遊びのようなものが並び、
全体の感想としては散漫な印象を受けるが、
その中でも名作「心の扉」など、
猪木ならではの「ユニーク」なものいくつかあり、
私の予想を超えてなかなか楽しめた。

「心の扉」


今日はいい天気
いつまでも拗ねていないで
心の扉を開いておくれ
窓のカーテンを引けば
心の奥へと光が射し込んでいく
さっきまであんなにこだわっていた
心のしこりが溶けだして
君の笑顔が輝いた


ほら 今日はいい天気


冷蔵庫の納豆
食べちゃってごめんね

……これはネタなのだろうか?

次の二つは面白かった。

「男なら」


ぐるぐる ぐるぐる 回ってる
一升瓶を逆さに立てて
一気に呷ってラッパ飲み
地球も一緒に飲み込めば
世界のみんなが目を回す
稽古で疲れ かいた汗
最後の一滴 出尽くせば
乾いた身体が酒を吸う


一気!
一気!
一気!
一気!
「男なら」
毒をも承知で呑む勇気
嫌いな奴をも飲み込んで
明日は明日の風が吹く

そして本の題名でもあるこれ。

「馬鹿になれ」


馬鹿になれ
とことん馬鹿になれ
恥をかけ
とことん恥をかけ


かいてかいて恥かいて
裸になったら
見えてくる
本当の自分が
見えてくる


本当の自分も
笑ってた……
それくらい
馬鹿になれ

猪木の敬愛する一休禅師の詩はやはり名作だ。

「道」


この道を行けば どうなるものか
危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし


踏み出せば 
その一足が道となり
その一足が道となる


迷わず行けよ
行けば分かるさ

とりあえず買っておいて、
プロレス好きの友人にでもプレゼントしようかと思っていたのだが、
予想以上に面白いので手元に置いておくことにする。

猪木詩集「馬鹿になれ」 (角川文庫)

猪木詩集「馬鹿になれ」 (角川文庫)