『スーパーサイズ・ミー』、2004年、アメリカ、監督・主演、モーガン・スパーロック

#1 Can only Super Size when asked.
(聞かれたらスーパーサイズにする)

#2 Can only eat food from McDonald’s …water included. 
(水を含め、口にするものはすべてマクドナルドの製品だけにする)

#3 Has to eat everything on the menu at least once.
(全メニューにつき、必ず一度は食べなければならない)

#4 Must eat three meals a day. 
(1日3回食べること)

このドキュメンタリー・フィルムの監督であり主演である
モーガン・スパーロック(Morgan Spurlock)は、
マクドナルド食品が有害か否かを検証するため、
上の4つのルールを自分自身に適用し、
自ら被験者となって30日間の生活をカメラに収めた。


そもそものきっかけは、アメリカの肥満少女二人が自分の肥満の原因として、
高脂肪食を提供するマクナドナルドを訴えたことにある。
この二人の訴えは棄却されたが、
その判決に
「原告はマクドナルド食が有害であるかどうかを立証できなかった」
という一文があった。
スパーロックは、これを自分で確かめようとして
このフィルムの制作を思い立ったようだ。


マイケル・ムーアの手法でおなじみだが、本作の手法はエンターテイメント。
ドキュメンタリーをエンターテイメントに仕立てることが
あらゆる問題に対して正当性を保持するかは疑問だが、
その親近性によってより多くの観客を期待できることは事実だ。
実際、本作はエンターテイメント作品として優れており、
その娯楽性がこの作品への求心力を生み出し、
サンダンス映画祭での受賞、一般的なヒットにつながったのだろう。


特に私が感心したのは音楽の使い方。
映像とのシンクロ、選曲などが優れており、サントラが欲しいくらい。
中でも、マクドナルド製品が中毒性を有する、ということを示す章で、
子供と遊ぶドナルドの映像に合わせて、
カーティス・メイフィールドの「pusherman」(麻薬密売人)
(from “Superfly O.S.T.”)が流れた時には大笑いしてしまった。
気づかなかったが、こういう仕掛けは他にもたくさんあるのだろう。


他には、恋人の菜食主義者のアレックスが知的でいい感じだった。
肉食システムの腐敗を訴え、
肉食を考え直すようモーガンに詰め寄るところなどは共感できないが、
知的な女性は美しい。
だが、「肉食とヘロインの常習は好みに依存するという意味で同じ」
という論旨はやっぱりおかしいと思う。

実験の結果として、高脂肪食であるマクドナルド製品は、
実験開始時には医師も予想できなかったような
身体の不調を引き起こすことになる。


なぜ、このような、中毒性を持ち、
常食とすることで身体に異常を生ぜしめるような食事が
野放しにされているのか?
本作で明らかにされるのは、マイケル・ムーアの告発でおなじみの、
アメリカのロビー団体の存在である。
この圧力団体は、
2004年3月には
「肥満を原因に食品会社を訴えるのを禁ずる法案」を通過させるほど強力だ。
食品業界はそれほど利益が大きいのだという。
日本の圧力団体の実態を知るのに何かいい本がないだろうか?
やはり「宝島」系になるのだろうか?


最後に、スパーロックは「スーパーサイズ」の販売の中止を提言しているが、
サンダンス映画祭で本作が最優秀監督賞を受賞した後、
マクドナルドは「スーパーサイズ」の販売を中止した。
マクドナルド側のコメントとしては、映画との関係は一切なし、
としているが……。


ともあれ、このようなドキュメンタリーがヒットするのは、
とりあえずいい傾向だろう。
私達はあまりにもドキュメンタリー映画に触れる機会が少ない。
ハリウッドスターがどうしたこうしたなんてフィルムはどうでもいいから、
その分レンタル店に少しでもいいから
ドキュメンタリーの在庫を増やして欲しい。
あと、ショート・フィルムも。


(メモ)
・1kcal. = 1リットルの水を1℃上げるのに必要な熱量のこと。


2004年サンダンス映画祭で最優秀監督賞を受賞
2004年Full Frame Documentary Film Festivalで>News:Docs:Priz


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