『dynamite』、Jamiroquai、2005年

以下は、6月に京都市内で行われたAuggie(以下、A)と
Oh!矢(以下、O)による対談である。 


     *     *     *     *


A:こんにちは。


O:どもども。久しぶり。早速だけど、聴いた? ジャミロの新譜。


A:もちろん聴きましたよ!
  新譜が出るって聞いたときは、
  ホント、「待ってました!」って感じでしたからね。


O:4年だっけ。長いよね。普通なら許されないインターバルだ。


A:まったくです。9.11のことなどもあって、
  JKがうまく気持の整理をつけることが出来なかった、
  ということもあるのでしょうけど…。


O:まぁ、そこらへんの話はおいといて、音楽の話にしようか。
  どうだった?


A:う〜ん……悪くはないんですけど…
  …意外性がないというか……
  ……期待が大きすぎたのかな。


O:あれ。イマイチっぽいね。
  僕は結構よかったんだけどな。なかなかいい出来じゃん。


A:いや、悪くは無いんですけどね、なんかあまり刺激を受けないんですよ、
  このアルバムからは……。
  ……ちょっと長くなるかもしれないけどいいですか?


O:どぞどぞ。


A:ジャミロって、トーキン・ラウドインコグニートガリアーノ達と一緒に、
  90年代のイギリスのムーヴメント、
  いわゆる「Acid Jazz」なんてジャンルで括られてると思うんですけど、
  そもそも「Acid Jazz」って言葉はトーキン・ラウドの総帥、
  ジャイルス・ピーターソンが創った言葉ですよね。

  で、日本なんかでは「何かイギリスで新しい音楽が始まった!」なんて
  受け止められたかもしれないけど、
  これらのミュージシャン達自身は何も新しいことをやっているつもりは無くて、
  自分達の好きな昔の音楽を再発見している、という感覚だったと思うんです。
  特にジャミロなんて、
  「Free Soul」から影響を受けているのが丸わかりですよね。
  ベースパターンとか、ホーンの使い方とか。
  ディジェリドゥーを使っているのは新しいのかもしれないけど。
  評価されたのは、その過去の材料の料理の仕方にあったのじゃないかと。


  あとはボーカルのJKのキャラがあまりに「立っている」ってのもあるでしょうね、
  あれだけ人気があるのは。
  なにしろ、環境問題を訴えながら、
  フェラーリが大好きで乗り回したりしてる「漢」ですからね、JKは。


O:そうそう、あれはメチャクチャだよな。
  でも確かにキャラが立ってるのは確か。
  あのヘンな帽子とかジャージも流行ったもんね。
  「ジャミロクワイ」ってバンドじゃなくてJKのことだと思ってるやつも多い。


A:3rdの『Travelling without Moving』があまりにも完成度が高かった……。
  「virtual insanity」は世界中で大ヒットしましたよね。
  で、ヒットしたせいかどうかわからないけど、
  4thから音楽的に創り方を変え始めたと思うんですよ。
  単なるFree Soulの引用に終わらないようなダンス・ミュージックを創ろう、と。


O:ほう。


A:僕がジャミロを評価してるのはここからで、
  「新しいダンス・ミュージック」を創るといって、
  安易に目新しいリズムに逃げなかったところなんですよね。
  イギリスなんだから、それこそドラムンベースやらブレイクビーツなどなど、
  その気になればそういうビーツを導入することもできたのに。


O:確か『Travelling〜』の最後にドラムンベースの曲入ってなかったっけ?
  え〜と…なんだっけ……


A:「Do You Know Where You’re Coming From」ですが、
  あれは無視しましょう。
  多分JKも後悔してるはずです。
  なんであのアルバムは「Spend A Lifetime」で終わらないのか…。
  本当に蛇足ですよね。

  話を戻すと、ジャミロはあくまでバンド編成で、
  そしてファンクネスを大事にしながら、
  しかもこれまでになかったようなダンス・ミュージックを模索する。
  そこに僕は期待してたんですよね。
  ただ、これは簡単なことではない。
  事実、4thの『synkronized』は、「canned heat」は突き抜けているけど、
  アルバムとしては散漫な印象を受けますよね。

  でも、5thの『A Funk Odyssey』を聴いた時は本当に嬉しかった……!
  何か「新しいダンス・ミュージック」の可能性を感じたんですよね。
  ディジェリドゥーもなくなったし。
  「Little L」なんて、コードは呆れるくらいシンプルなのに、
  全体として豊かな曲構成ですよね。
  ベーシックなリズムパターン(このさりげないハウスの使い方もいい!)に
  上を重ねていく、というダンス・ミュージックの構成に忠実でありながら、
  バンド演奏ならではのグルーヴが、
  足し算でなく掛け算で補強しているというか……。

  とうとうジャミロは一皮むけたな、と感じて嬉しくなったんですよ。


O:そうね、『A Funk Odyssey』は僕も好きだなぁ。
  でも僕のジャミロのベストは
  2ndの『The Return of the Space Cowboy』だけど。


A:「Half The Man」は僕も大好きですけどね。
  とにかく、そんな感じで次のアルバムに期待してたんですよ、僕は! 



(肝心の『Dynamite』の内容に入らないまま、明日に続く)


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