『少年倶楽部』は伝説の雑誌です。
京都で送った学生時代、古い本を骨董として売っていた古書店で、丁寧に包装された「少年倶楽部」を見たことがあります。
今でもファンが多い雑誌なのでしょう。
穴を掘る
『少年俱楽部』昭和5年8月号の笑い話に、次がある。
◇なるほど理屈
甲『君! 穴を掘ってるね』
乙『うんにゃ、土を掘って、穴を拵(こしら)えているのさ』
この面白さは「もうできている穴を掘ってどうするんだ」というツッコミを許す所にある。説明するまでもないが、
「穴」は「掘るという行為の結果に出来た物」。そこでこの「穴」を言語学では「結果の目的語」と呼ぶ。
理屈では乙君の言うように「土を掘って穴を作る」だから、「その穴を掘ってどうするんだ?」とツッコミたくなる。他の例では「お湯を沸かす」、「ご飯を炊く」、「ウエディングドレスを縫う」など。
昭和5年の児童向け雑誌にこんな笑話が載っていたとは。
『少年倶楽部』は講談社が大正3年(1914年)に創刊した少年少女向けの雑誌。その創刊号に「笑い話を作って送ってください。おもしろいものは雑誌に掲載します」と募集し、採用された投稿者の氏名も掲載した。その選りすぐりをまとめたのが 『のどかで懐かしい『少年俱楽部』の笑い話』講談社刊。アマゾンでも安価で入手できるのでおすすめ。「当時の絵も活字もそのままに」復刻していて、特にその挿し絵が懐かしい。
『少年倶楽部』の歴史的価値もさることながら、わたしが興味をいだいたのは「結果の目的語」のくだり。「結果構文」「結果目的語」という分類があるのですね。おもしろいなあ。
こういう分類を、さわりだけでいいから高校の英語の授業で教えてくれるといいのに。あ、でもいまの「使える英語」を教えようとする学習指導要領の思想とは相反する内容かもしれませんね。
そういえば、高校時代に「同族目的語」という概念を学びました。
dance a dance,
sigh a sigh
dream a dream
smile a smile
laugh a laugh
live a life
die a death
sing a song
fight a fight
grow a growth
walk a walk
︙
というやつです。
上に挙げた形では意味不明なので、「live a happy life」という形で使います。
文法問題対策というよりは、自由英作文などで文章表現の一環という形で学んだように思います。
「結果目的語」「同族目的語」……こういうの、現状の英語教育では概念としてではなく、言い回しとかで経験から使えるようになっていく方向だと思いますが、理論的に理解していく方向も面白いのではないか。
そんなことを考えました。