一字下げ(indentation)   

文章作法の決まりごとは、テキストを読みやすくするためにあるのだと思います。

デザインもしかり。

本のデザイン、レイアウトは、読みやすさを助けるということに加えて、内容の補強という役割もあるのではないでしょうか。

 

一字下げ   

日本語原稿用紙を使うとき最初の1マスは空けて2マス目から書き始める。英文ではタイプライターで2, 3字分を空打ちして書き始める。これを英語では、indent(名詞・動詞)、またindentation (名詞)という。

 

  段落の書き始めや改行後に一字下げるのは、漱石が原稿用紙の欄外に朱筆で「文章ノ書キハジメ一字下/以下準之」と指定したのが1906年。その頃から定着したらしい。(大澤聡 京都新聞2017.3.2)

 

これが一昔前の「紙の原稿用紙」の作法であった。ところが電子版が現れて、たとえばNew York Times の電子版を開くと、この段落でのインデント書式が姿を消した。いきなり行頭から書き始めている。他紙も同様である。     

ただし、これは英字新聞の話で、日本語の新聞は今まで通り、段落は1字下げの書式を守っている。

 

再び、ところが、である。段落の1下げの伝統を破った本に出会ってビックリした。『ハイテク時代のデザイン』という本。著者は竹原あき子氏、出版社は鹿島出版会で、1989年発行。

不思議というかウカツというか、十数頁読み進めて初めて気が付いた。更に驚いたことに、縦書きの本の右ページの右端中央に偶数ページしか印刷されていない。しかも和数字で。左ページにあるはずの奇数ぺージ数はどこをさがしてもない。左ページの左端中央には章内の小見出しが印刷されている。

 途中まで気づかなかったかったことで明らかなように、何の不都合もなかったし、違和感もなく、読み進んでいた。違和感を感じなかったのは、段落の終わりに必ず数文字分の空白があるから、読んでいるときに数字分の空白があると、自然に次行の行頭に視線が移り、新しい段落だ、と認識しているからでもあろう。 

  

ハイテク時代のデザイン

ハイテク時代のデザイン