具体的な数字を使うと、説明はグッとわかりやすくなる。
それは事実です。
分かりやすさということ その二
数字の使用について。
LSTというアメリカ製の戦車を運ぶ揚陸艦に、僕らは乗り込んだ。全長100メートルの艦隊。75メートル近くある京都の三条大橋より長いんやで。≫
(京都新聞2017.8.17 早川一光『こんなはずじゃなかった 第2回4』
同じ紙上に次があった。
京都の市中を、「洛外」とよぶ。これがひろがるのは、十一世紀の末ごろから。「京洛」という表記とともに、普及した。だが、「洛外」の出現は、もっとあと。ようやく、十四世紀の中ごろにあらわれる。ただし当時は「洛外」より「辺土」とあらわすほうが、多かった。そう、京都の外周は、たいてい「辺土」とよばれていたのである。「洛外」の一般化は、十五世紀から。まあ、「辺土」よりましになったのだと考えることにしよう。
2つの文章を並べてみると、どちらが読者に親切な書き方かがよくわかる。11世紀、14世紀の中ごろ、15世紀と言われて、とっさに、何時代といえる人が何人いるだろうか。ちなみに、大雑把にいうと11世紀は鎌倉時代、14,15世紀は室町時代、と老婆心ながらではなく、「親切心から」付け加えておきます。
井上章一さんの数字の使い方、これはこれでわかりやすい気もしますが……というのも、「洛外」という言葉が広まるまでに数百年かかったんですよ、という「京都人のイケズ」を伝えるための数字のような気もしますので…。
そういえば、井上章一さんのあの本、「積ん読」状態でまだ読めてません。『アダルト・ピアノ』はすぐ読んだのですが。