焼き鳥と焼きとり

言われてみれば、こういうのよくあります。

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焼き鳥と焼きとり

縁日で焼き鳥を売っていました。看板のメニューには

やきとり    1本 300円
牛のやきとり  1本 500円
鹿のやきとり  1本 500円

 

と書いてありました。牛は牛であって鳥ではないと思うのですが、

店主の頭の中では「やきとり」は焼き鳥ではなく、「肉を焼いて串に

刺したもの」の意味な のでしょう。それはそれで理解できます。

国語辞典で「焼き鳥(やきとり)」をみると次ようにあります。

 

鶏(トリ)肉(広義では、もつ焼きをも指す)。(『新明解』)

鳥の肉や内臓。牛や豚の臓物を使ったものもいう。(『明鏡』)

鳥肉、牛豚の臓物(『岩波国語』)

 

 こういうのは言語学的にはなんと言うのだろうかと悩んでいたら、「意味の一般化」 というのだと大学の先生から教わりました。教授によると、英語のbirdが「小鳥」の意味であったものが鳥類一般を指すようになった。

英語ではgeneralization of meaningというそうです。

 

 厳密には違う範疇でしょうが、固有名詞などに見られる普通名詞化など、このような例はたくさんあります。細君にサランラップを買って来てと言われ て、私がたま「本日特売」の安い方 のクレラップを買って来ても叱られないで済む。これも「意味の一般化」のおかげです。

少し違うかもしれませんがこういうのもあります。

 

彼女が示した写真の一人は、かなり明るい赤茶の茶髪。

内館牧子『暖簾にひじ鉄』週刊朝日 2010/4/2)

 

かなり黒髪に近い茶髪です。(Noel)

赤茶色と茶色はちがうし、明るい赤茶色でも、黒に近くても「茶髪」ですから、

茶髪は茶色を主として今では広義の「染めた髪」として使われてもいるようです。

 「焼きとり」の例、最近では「〇〇の焼き串」という表現が使われているように思います。やはり、同様のツッコミが多かったのでしょう。

こういう例、「形容矛盾だよね~」などと笑って終わっていましたが、これからは「こういうのって、『意味の一般化』『語の一般化』って言ってね…」などとうんちくをひとくさりして、周囲から鬱陶しがってもらえそうです。またひとつ、賢くなりました。