「エノケソ」

まあ、お祭りやイベントなどの興行は、だまされる可能性があるのも織り込み済みでお金を払うものなのではないでしょうか。

期待してるけど、外れる可能性もあり。外れたら、それはそれで話のタネになる、と。

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榎本健一(1904-1970)

エノケソ

 昔々、榎本健一という喜劇役者がいた。多くの偉人がそうであるように、彼も「エノケン」の愛称で親しまれた。

その大スター、エノケンが我が町に来るというので大騒動。大枚はたいて楽しみにしていたら、舞台に現れたのはエノケンではない! 興行主に詰め寄ると、看板をよく見ろと言う。目を大きくしてみると「エノケソ来る!」

エノケンではなくエノケソ。看板に偽りはなく、エノケンと早とちりしたほうが悪い。引っかかったほうが愚か。泣くに泣けない話だがこのようなペテンをエノケソという。

このエノケソの「インチキでよごれたチラシ」を蒔くアルバイトをする話が、遠藤周作『わたしが・棄てた・女』にも出てくる。このごまかしについては、興行師の金さんが考えたらしい。 (遠藤周作『わたしが・棄てた・女』より)

 

新装版 わたしが・棄てた・女 (講談社文庫)

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 マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィンの冒険』 にもこれと似たペテン興行の話があったと思うが、どこの国でも、いつの時代でも、騙されるのは愚かな大衆ということか。   

 

ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)

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