白洲正子、坊さんの「用事」という心づくし。

建前としては許可できないこと、ありますよね。

 

f:id:Auggie:20190905050730j:plain

 

坊さんの用事 

 白洲正子が美術家と寺に行った。その寺の佛像は普通は写真撮影をさせてくれないのだが、拝観をすませると、坊さんは、急に用事を思い出したと言ってどこかへ行ってしまった。その間に美術家は写真を撮った。一通り撮り終わったころ坊さんが帰って来て、お茶を出してくれた。帰り道、美術家はあれが坊さんの心づくしなんだ、と説明してくれたと言う。

金平糖の味 (新潮文庫)

金平糖の味 (新潮文庫)

 

 

これに似た話はよく聞きますが、わたしが覚えているのは『家栽の人』のエピソード。

 

 

ある過ちを犯して少年院に入ってしまった少年は、更正するきっかけとして図書室での勉強を思い立つ。しかし、図書室の開館時間は限られており、思うように勉強がはかどらない。そこで、施設の担当官が見て見ぬふりをして、勉強するための部屋を使わせてあげる、というものです。

日本人の心性の奥ゆかしさの表れ、とも言えると思います。