結局、こういうのは書き手の想像力の問題なんです。
タクシーで30分 —— 分かりやすさということ
様々なサービスする側として、わかりやすさを心得るということは、相手が何を求めているのかを正しく理解することだと言えます。次は登山月刊誌の案内です。
谷川岳へのアクセス
タクシーを利用すれば大幅に歩行時間を短縮できる。行きはJR上越線水上駅からタクシー30分でマチガ沢出合まで入れる。
(山と渓谷社)
この案内は勉強不足です。利用者が知りたいのは、所要時間だけではありません。私はタクシーを利用する場合にはいくらかかるのだろうかと気になります。同じ出版社の単行本では料金も書いてありますから、ライターの違いでしょうか。
伊吹山へのアクセス
タクシー=近江長岡駅~三之宮神社(所要約15分、約1600円)
旅行ガイドもユーザー・フレンドリーなものもあります。
After you've strolled around Ebisugawa, hop in a taxi and head over to the Kyoto Handicraft Center―15 minutes and about 800 yen away.
(夷川を散策したら、タクシーに乗って京都工芸館へ向かいましょう。15分、約800円分の距離です)
(The Japan Times Online 2004.09.10 )
タクシーで15分の距離は歩くと疲れます。それでタクシーを勧めています。そしてその料金まで。これでおおいばりで、右手を挙げて「ヘイ、タクシー!」と叫ぶことができます。嬉しいですね。
でも、これは2004年の案内ですからタクシー料金は違っているでしょう。この点が情報誌の泣き所です。
「わかりやすい文章」のことを考えると、わたしはいつも山形浩生氏のこの文章のことを思い出します。
結局、書き手の想像力の問題だし、読みやすさ/読みにくさの問題は、書かれている内容の質にまで影響する話だと思うのです。