「タクシーで30分」では足りない? — 分かりやすさということ

結局、こういうのは書き手の想像力の問題なんです。

 

タクシーで30分 —— 分かりやすさということ

 様々なサービスする側として、わかりやすさを心得るということは、相手が何を求めているのかを正しく理解することだと言えます。次は登山月刊誌の案内です。

谷川岳へのアクセス

タクシーを利用すれば大幅に歩行時間を短縮できる。行きはJR上越線水上駅からタクシー30分でマチガ沢出合まで入れる。

山と渓谷社

 

この案内は勉強不足です。利用者が知りたいのは、所要時間だけではありません。私はタクシーを利用する場合にはいくらかかるのだろうかと気になります。同じ出版社の単行本では料金も書いてありますから、ライターの違いでしょうか。

 伊吹山へのアクセス

タクシー=近江長岡駅~三之宮神社(所要約15分、約1600円)

(『関西周辺の山』山と渓谷社

 

改訂新版 関西周辺の山 (週末登山コースの百科事典)

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  • 発売日: 2010/07/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

旅行ガイドもユーザー・フレンドリーなものもあります。

After you've strolled around Ebisugawa, hop in a taxi and head over to the Kyoto Handicraft Center―15 minutes and about 800 yen away.

(夷川を散策したら、タクシーに乗って京都工芸館へ向かいましょう。15分、約800円分の距離です)

(The Japan Times Online 2004.09.10 )

 

タクシーで15分の距離は歩くと疲れます。それでタクシーを勧めています。そしてその料金まで。これでおおいばりで、右手を挙げて「ヘイ、タクシー!」と叫ぶことができます。嬉しいですね。

でも、これは2004年の案内ですからタクシー料金は違っているでしょう。この点が情報誌の泣き所です。

 

「わかりやすい文章」のことを考えると、わたしはいつも山形浩生氏のこの文章のことを思い出します。

結局、書き手の想像力の問題だし、読みやすさ/読みにくさの問題は、書かれている内容の質にまで影響する話だと思うのです。