パティ・オースティン(3)「GRP時代のPatti Austin」

昨日、一昨日とパティ・オースティンについて書いた。
今日も彼女について書くが、しかし好意的なものではない。


パティ・オースティンの音楽と出合って激しく心を動かされたものの、
有線で流されたその音楽の演奏者を知る術もなく
(特殊な有線放送でパートの店員も詳しく知らなかった)、
はっきりとPatti Austinという名前と音楽が一致したのは
それから実に5年後、藤原ヒロシの『KICK BACK vol.1』だった。
曲は「Say You Love Me」ではなかったが、
その歌声とバンドの演奏にピンときたぼくは、
早速その時期の彼女の音楽を探り、
「Say You Love Me」に巡り合えたというわけだ。
この、CTI時代のPatti Austinの音楽の繊細さについては昨日書いた。
今日はその後の「GRPレーベル時代」について、
恨み言のようなものを書き留めておきたい。


CTI時代の3枚のCDにすっかり魅せられて、
ある時期、レコ屋に行く度、真っ先に彼女の名前を探すようになっていた。
そうして買ったのが『love is gonna getcha』『carry on』。
レコ屋で見つけたときはその場で小躍りするほど嬉しかったが、
その嬉しさは、帰って聞いたときの失望に相殺された。
被害妄想かもしれないが、レコ屋の店員は笑顔で商品を渡してくれたが、
あれは不良在庫が処分できてほくそえんでいたのかもしれない。


いったい、何に失望したのか?
求めた2枚が、CTIの3枚と明らかに「音楽」が違ったからだ。
メンバーや演奏技術、声質といった問題ではない。
「繊細さ」とは対極にある音楽なのだ。
それははじめのドラムの音を聞くだけですぐにわかる。
パティ・オースティン自身も、
歌い手としては上手くなったのかもしれないが、大味すぎる。
90年に録音されたこのアルバムは、
当時の流行の音、という問題もあるのだろう。
しかし、期待が大きかった分だけ、失望は大きかった。
新しいCDを聞いたときにこんなにガッカリしたのは久しぶりだった。


しかし、好きになった弱みというもので、
その後レコ屋で遭遇した『that secret place』、
『the ultimate collection』、『jukebox dreams』も購入。
結果はどれも大ハズレ。
やっとGRP時代の彼女と手を切る踏ん切りがついた。


好きなミュージシャンが、
自分の好みと違う方向にいってしまうのを見るのは悲しい。
こういうとき、聴き手は黙って受け入れるか、
離れていくかしかないのだろうか?
過去に偉大な作品を発表したミュージシャンを、
現在のクソのような作品で評価するのは聴き手の不当な仕打ちか?
これは『ハイ・フィデリティ』でも語られていた問題だ
(ちなみに、そのときのミュージシャンはスティービー・ワンダー
……該当しすぎてます。)。


とりあえず、いい経験にはなった。
立ち直るのに少し時間がかかったけどさ。

HIROSHI’S KICK BACK(PRIVATE MIX)VOL.1 compiled by HIROSHI FUJIWARA

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