ジョゼフ・コットンとマストロヤンニの「帽子」

『疑惑の影』は1943年、『ひまわり』は1970年です。

 

帽子 

 帽子は映画では大切な小道具の一つだ。

 カリフォルニアの妹の家庭を訪問した男が、部屋に案内されて帽子をベッドに置こうとしたら、妹の夫にとめられる。

「迷信を信じるのか」

「私は信じないが、トラブルが起こるのはごめんだから」 

妹の夫が出てゆくと、彼はイタズラっぽく嗤うと、帽子をベッドに投げる。そうして、トラブルが始まるのがヒッチコックの『疑惑の影 Shadow of a Doubt』。カリフォルニアにはそんな迷信があるのか。主演は『第三の男』のジョゼフ・コットン

 

 

 『ひまわり』の一場面では、マストロヤンニが引越し途中のトラックの荷台に乗っている。葬儀の行列にとすれ違うと、帽子に手をやりそれを脱ぐ。とても自然な仕草だ。生活の中で身についた動作なのだろう。私はそんな時、親指を隠せと教えられた。