(14/100) 『知の論理』、東京大学出版会、一九九五

知の論理

知の論理



「知」の三部作の2冊目。
今日は引用づくしで。

認識における論理の創造性を扱った本。

で、シリーズ中もっとも「論文集」の要素が強いといえるだろう。
慣れ親しんだ内容・構成です。

「カオスとはなにか」(金子邦彦)
カオスは決定論の枠内でありながら、その限界を示しているともみなせます。
初期条件のどのように小さな差でも大きな差へと増幅されてしまうから、
われわれが無限精度の観測を行えない限り、
決定論でありながら確率論を導入せざるをえなくさせてしまうのです
(「ラプラスの魔」)。
こうして決定論か確率論かという二者択一的な対立は
カオスの中に止揚されたと考えられます。
実は上のような対立はいろいろなところで姿をあらわしています。
生命現象では遺伝によってプログラムされているのか
外界からの予測できない影響で左右されているのかという対立は
老化の問題をはじめとして多く見られます。
また工学でも、プログラムしておくという立場と
外界からのコントロール不能な影響を重視する立場の対立はしばしば見られます。
その典型的な例は、
現在のコンピュータの基礎を作ったフォン・ノイマン
サイバネティックス創始者のウィーナーの立場の対決にみられます。
フォン・ノイマンがいかにエラーを除去して
プログラム通りに動かせるかを計算機設計で考えていくのに対し、
ウィーナーはむしろ雑音と共存するという観点があるようです。
カオスのようにプログラムされた世界から「雑音」が発生するという事態は
この両者の立場の対決を違う次元に止揚してしまうわけです。

コジェーヴが「日本のスノビズム」について、そのヘーゲル論につけた註。
「現在すべての日本人は、例外なく、完全に形式化した諸価値に従って、
即ち"歴史的な"意味で"人間的な"内容をまったく奪い去られてしまった諸価値に従って生きている。

日本経済の特徴。
? 企業間における長期継続的取引、すなわち系列や企業集団
? 企業―政府間における規制を介した関係、すなわち産業政策や行政指導
? 企業内における協調的な労使関係、
  すなわち終身雇用・年功賃金・企業別組合(「三種の神器」)

学知(エピステーメ)
… 自然のような必然的に存在するものを対象とする理論活動(あるいは観想活動)に備わる知
技術(テクネー)
… 変化を及ぼすことのできるものを対象とする製作活動に備わる知

フランシス・ベーコン
『ノヴム・オルガヌム』は科学の進歩の方法を集積し、組織化したものであり、
晩年の著作『ニュー・アトランティス』というユートピア物語は
科学と技術が社会に役に立つように制度化された具体的なモデルを描いたもの
イギリスの王立協会はベーコンの影響を受けて成立した。

論文の構成要件
1 問題設定・序論(Introduction)
 なぜそのテーマを扱うのか、その意義は何か、自分の主張、仮説はいかなるものか、
自分の主張や仮説からどのような結果が予測できるか
2 背景・研究史(Background)
 その問題はすでにどこまで明らかにされているのか、
自分の研究はどのように位置づけられるのか。
3 方法・手続き(Method)
 自分はどのような方法でそのテーマに切り込むのか
4 結果・証拠(Results)
 どのような新しい事実や考え方の根拠が明らかになったのか
5 解釈・考察・討論(Discussion)
 上記の事実に基づいてどのような解釈が成り立つか、
自分の主張はほかの節に比べてどう違うのか、このさき何を調査していくべきか。